はぁー……。

黒崎冬翔(くろさき かずと)は今日何度目かの大きな溜め息を吐き出した。
たった今、最後の食料であるカップラーメンを食べきってしまったのだ。


今日食料を買い出しに行かないと明日から何も食べるものがなくなってしまう。
オンラインサービスを使えば外に出なくても済むが、ネット内に自分の情報を登録するのが怖くて、食料がなくなる度嫌でも近くのスーパーマーケットに買い物に行く事にしていた。

10分ほど床に寝転び、どうするか考える。
悲しい事に大好きなチョコレートも食べきってしまっており、今や彼の支えはこの部屋には幼い頃から好きだったアニメのキャラクターのフィギュアや、ゲームソフトしかない。


しかし、フィギュアやゲームソフトでは腹は満たせない。
彼はゆっくりと身体を起こして、窓の外に顔を向けた。
秋の青空はゆったりと、夕焼けの橙色に溶け始め、優しい夕日が冬翔の部屋に差し込む。



そこから更に5分ほどオレンジ色に溶けていく青空を眺めてから、ようやく黒いキャップを目深に被り、更にマスクをした。
少し息苦しかったが、人に顔を見られるよりはマシだった。


腰の辺りまで伸びた黒髪をそのままに、冬翔はゆっくりと玄関に向かうとドアノブに手をかける。