「ただ1人なだけだから。」

自分から言っておいて、なかなか刺さるものがあるな。
なんて思いつつ、話は終わっただろうと思い、持っていた小説に再び視線を落とす。

「なあ、それ何の小説?」

どうやら話は終わっていなかったらしい。僕は、はあ、とため息をついた。

「実は君も友達居ないとか?」
「いや?そんな事はねぇよ?ただお前が暇そうだったから話し掛けただけ。」

本当に厄介な奴だ。一人の時間を楽しもうとしてる人の気持ちとか知っているのだろうか。

「悪いけど、見ての通り小説に忙しいんだ。後にしてくれるかな。」
「はいはい、つれねぇな。」

そう言って彼は、ようやく自分の居場所であるべき場所に戻って行った。



______ガラガラ


「はいみんな、席に着いて。」

「今日は皆さんに転校生を紹介します。」

そう言われた瞬間、辺りかがザワッとしたのが分かった。

「女の子かな?」
「男でも嬉しい!」
「えーどっから来たんだろ」
「転校生ってわくわくするよね」

今から会えるというのに、周りはそんなことを呟いている。そんな教室の空気を切るかのように、再びドアを開ける音が教室に響き渡る。

「皆さんこんにちは。今日からこのクラスに入ります。如月織(きさらぎ おり)と言います。宜しくお願いします!」

何の緊張もせず淡々と話し出す。彼女が言い終えた後、拍手と共にコソコソ話し出す。おおよそ、可愛い、だの、元気だな、だの彼女について話しているのだろう。
この人達はせっかちなのか?後で話せば全て分かるだろう。なんて言えるはずもなく僕はただ前を向いて席に座っていた。