───厳しさと優しさ───
何とか事情を話し敵意は無いことが証明され俺は釈放された。



気付けば辺りには綺麗な夕日が出ていた。



「なんなんだ…ここの住民は警戒心が強いのか?」



俺はぶつくさ言いながら行くあてのない街を散策しながらお腹が空いたのでレストランを探すことにした。



「すみませーんこの辺って食事処ありますか?」



「……」



だが、皆さん警戒心が強く誰も取り合ってくれなかった。



ゲームの世界だろ!?もっとフレンドリーな人は居ないのか!?と思いながら仕方なく広場の中央にある噴水の前に佇んでいた。



「きゃあぁっ!」



「うわぁぁぁっ」



突然住民達が叫び出す。



なんだ?と俺も辺りを見渡す。



すると俺の後方からドスンという足音と共にとてつもなく大きな影が視界に映る。



慌てて振り返り巨大な影の全貌を目視する。



それはとてつもなく大きなトカゲのようだ。



「助けて……っ」



「見ろ!女の子だ!」



「!」



助けてやりたいが俺の財産は100000マネー程宿や食事が大体いくらなのかも分からないのと一番の問題は武器が無い。



まぁ、武器が無いお陰で俺は日が落ちる前に釈放されたのだが…



「…っ!」



そんなことを思っている間にも化け物は女の子の身体をキツく締め上げている。



可哀想だが俺には石を投げる以外の選択肢は無かった。



「怒らせたらごめんなっ!」




思いっきり目玉めがけて石を投げる。



カツン…と虚しいぐらいに届かず化け物の顎に石は当たった。



化け物は雄叫びも叫び声も上げることなく首をスッと動かし俺をガン見する。



俺もどうすることも出来ずただ目を逸らさないようにするしか出来なかった。



だが…街の子供達は大人とは違った。



「兄ちゃん!これ使って!」



街の子供達が渡して来た斧を受け取り礼を言う。



「ありがとう!」



「うん!」



そして俺は街の子供達から受け取った斧でトカゲ型のモンスターを攻撃して街の子供達は石や石を玉にしてパチンコを作りトカゲ型のモンスターを攻撃していた。



「……キュールルッ」




戦いに幕を下ろしたのは化け物の悲鳴だろうかの遠吠えだろうかのひと吠えだった。



トカゲ型の化け物の尻尾が緩み始め女の子が解放される。



そしてトカゲ型のモンスターは街の郊外にある森へと逃げた。



その瞬間「良かった!」や「大丈夫か!?」という女の子を心配する声が大人達から上がる。



俺はかっこいい所を見せたかったのに結局子供達が居なかったら何も出来なかったうえに狙いを外して恥ずかしかったからそそくさと撤収する。



だがその女の子は人の群れから俺を見つけ叫んだ。



「あの!ありがとうございました!」



「!?」



俺は後ろを振り返り女の子と目が合う。



すると女の子は俺の元へと駆け寄って来たのだった。



「でも、俺は子供達と倒した訳で…」



「貴方が動かなかったらあの子達も動いてなかったです」



女の子が俺に声をかけると街の住民はこぞって



「なんだいあの子」や「心配してやったのに」だとか捨て台詞を吐き捨て各々去って行った。



「いいえ、でも俺…結局何も出来なかったしダサかったでしょ」



「それでも街の大人達は見てるだけだったのに貴方は石を投げてくれた…それが嬉しかったんです」



この世界にも優しいやつは居るんだ。



これなら食事処ぐらいは教えてくれるだろう。



「あの…?」



黙り込んだ俺を心配したのか女の子は顔を覗き込んで来る。



「あぁ、大丈夫。ところでさ、この辺に食事処とか宿とかある?」



「ありますよ!おすすめの所に案内しますね!」



「ありがとう、助かるよ」



そして俺は女の子と共に歩き出した。