───ゆぴぴの過去───
マーベスさんとマグダスとの食事から数日後俺はゆぴぴから魔法を教えて貰っていた。



「ゆぴぴってどうしてアイドルと魔法使いになろうって思ったの?」



普通この世界では仕事は一つだけの人が多い。



「私の小さい頃からの夢だったのアイドルと魔法使い」



「なるほど」



「フウタは?」



「俺?俺も似たようなものだよ」



「ふーん、そっか」



「うん」



教科書という名の呪文書を眺めながら他愛のない話をする。



この時間が幸せであり、もっと違う勉強法があるのでは?となる。



「ま、今日はこのへんにして休まない?」



「もー仕方ないなぁ…」



「やった!もうお腹空いててさ」



「分かった、分かったから」



俺はゆぴぴを急かして近くのレストランに入った。



俺達は宿に戻り各々の部屋へと戻るとベッドに寝っ転がりそのまま寝落ちした。



しばらくして扉を叩く音が聞こえる。



扉を開けるとそこにはゆぴぴが立っていた。



「嫌な事思い出したから一緒に居たいんだ…いい?」



「いいよ」



俺はゆぴぴを部屋に招き入れるとベッドに座らせた。



「言いたくない事なら言わなくてもいいけど…嫌な事って何があったんだ?」



「…!実はね…」



そう言ってゆぴぴは顔を下に下げながら話し始めた。



「私ねここに来る前から家族が居ないの」



「…」




事故か自殺かはたまた病か…と思っていると



「パパがねギャンブラーだったの」



と言う。



「私もお菓子を貰ったりしてた…でも生活は厳しくてママはそのまま蒸発したの私が5歳の時の誕生日に」
「…」



「何でよりにもよって誕生日にしたんだろうねその時以来私は誕生日が嬉しいとは思えないんだパパもそうだったし」



「…」



「その時から私はパパから虐待されるようになってたの。で、"こんな世界嫌い"だって思ってたらここに来てた不思議だよね」



「ゆぴぴ…」



「でも、ここに来てこう思うようになったの。守りたいものがここで出来るから強くなりたいって思ったのかなってだから、この世界での時間がいきなり終わるのが怖くて…私帰りたくない…」



「ゆぴぴ…」



確かに何時までもゆぴぴと一緒に居られるとは限らない明日目を覚ますと元の現実世界へ帰っているかもしれない…だから"大丈夫ずっと一緒だ"とは言えない。



だから俺はせめてこの時間はゆぴぴに幸せを知って欲しい、安心して欲しいと思った。



俺はゆぴぴの頭にを撫でる。



「…!?フウタ?」



「俺もここが楽しい、帰りたくない…でも何時までも一緒に居られるとは限らないから今を楽しめればいいんじゃないかって思うんだ」



「…ありがとう…そうだね...」



その後ゆぴぴは泣きながら眠りについたのだった。