───ハプニングの誕生日パーティー!?───
朝食後、ホールから自室へ戻る途中の廊下でベルーガ王子に声をかけられる。



「茜、ちょっといいかい?」



「ベルーガ王子、どうしたの?」



「ここじゃなんだから、僕の部屋に来てくれないかい?リリールも待ってるから」



「分かった」



「じゃあ、行こうか?」



「うん」



ベルーガ王子が手を出し私は頷きながらベルーガ王子の手を取った。



ベルーガ王子の部屋に行くとそこには既にリリール王子が居た。



にこにこの笑顔で手を振っている。



「お留守番ありがとう。リリール」



「どういたしまして♪会いたかったよ茜」



リリール王子が私にハグをしようと両手を広げるとベルーガ王子はすかさずリリール王子をハグして頭を撫でる。



「本当にありがとうリリール、じゃあ作戦会議を始めようか?」



「苦し…っ」



「ところで、何の作戦会議?」



「茜、耳を貸してくれるかい?」



「ん?」



すると私の耳元でベルーガ王子が囁く。



「ムーンの誕生日パーティーの相談だよ」



「そうなんだ!ところでいつなの?」



「再来週だよ。そろそろプレゼントとか準備しなきゃだよねー…」



これみよがしに溜息を吐くリリール王子に



「リリール王子はムーン王子の誕生日パーティー嫌なの?」
と尋ねた。



「そりゃあね、だって去年なんかプレゼントをその場で開けてハグして来たんだよ"とっても嬉しいよ!ありがとう!"って暑苦しいっての」



「それだけ嬉しかったんじゃないかな?」



「…まぁ、僕が選んだプレゼントなんだからセンスは良いよね」



「センスの問題だけじゃないと思うんだけど…まぁいいや、今年はどんなサプライズにしようと思ってるの?」



「んー、僕的には苺尽くしの苺パーティーとか良いと思うんだよね。ふたりはどう思う?」



「良いと思う!苺はムーン王子の好物だもんね」



「僕も賛成」



「じゃあ、ご飯は苺パーティーで決まりだね。プレゼントは…」



と、ベルーガ王子が私の方をチラ見する。



するとリリール王子も何か分かったように言った。



「あぁ!そっか今年は茜も居るし茜に決めて貰おうってことだね?ベル兄さん」



「ということで良いかな?」



「…分かった、頑張って決めるね!」



「決まりだね。じゃあ作戦会議は終わりってことで良いかな?」



「うん、僕はおっけーだよ」



「私も大丈夫」



ベルーガ王子は辺りを見渡し、何も無い事を確認して作戦会議を終わらせるとベルーガ王子は改めて私達に向き直り



「ふたりとも何か困ったことや進捗が怪しくなったらすぐに僕に連絡すること。良いね?」



「はーい。じゃあ僕は行くから」



「分かったよ」



「じゃあまた夕食で」



そして扉がしまるとベルーガ王子とふたりきりであることに今更気付く。



このまま流れに乗って私達も自室へ帰ろうとするも



「駄目だよ、茜にはここに居て貰わなきゃ困る」



「何で…?」



「…寂しいから」



と言ってベルーガ王子がハグしに来る。



「意外と甘えん坊さんなんだ?」



と聞くと



「…そうだよ」



と頬を赤くして応えた。



「可愛いね」



「可愛いくないよ。お母様にも昔呆れられてたんだ"お兄ちゃんなんだからしっかりしなさい"って」



「でも、ふたりきりの時は私に甘えたいってこと?」



「うん。たまには良いだろう?」



「まぁ良いんだけど」



そうして私達はムーン王子の誕生日プレゼントをふたりで見たり、他愛もない話をして一日を過ごした。




翌日私はリリール王子の元へムーン王子の誕生日プレゼントについての相談をしにムーン王子の部屋に向かった。



「ムーン王子?」



だが、扉をノックしても一行に返事がない。



今日の朝食の席にはきちんと来て居たので何処かに出かけているのだろうと私はムーン王子を捜索しながら私個人でもプレゼントをどうしようかと思案する。



だが、やっぱり自分ではプレゼントは決まらずムーン王子のことをよく知るリリール王子を捜索することに集中することにした途端



庭園の大きな木の下でお昼寝をするリリール王子を見つけた。



「リリール王子」



私が呼びかけると



「ん〜…なぁに〜?」



というとても可愛いらしい声がリリール王子の口から発せられる。



「ムーン王子の誕生日のことで相談したいんだ」



「いいよ〜乗ってあげよう」



と機嫌が良さそうに応えた。



「ありがとう」



「で?どうして僕に相談するの?」



「実はね…ムーン王子のことをよく知る人達にムーン王子のこと教えて欲しくて聞いて回ってるんだ」



「ふーん?そっか」



「うん?何か変だった?」



「いや、変ではないよ。そっかー。でも、それは僕らに聞くんじゃなくて、茜自身が考えたプレゼントの方がより解って貰えてるって思えて嬉しいんじゃない?」



「そっか、そうだね。でも、探し始めると次々と良いと思う物が出て来て困ってるんだよね…」



「そっか。でも、頑張って選んでるの想像してムーン兄さんはめっちゃ喜ぶと思うから僕はアドバイス出来ないや…ごめんね?」


「いいよ、ありがとう話聞いてくれて」



「リリール!茜!」



「あ、ムーン王子」



「げっ!ムーン兄さん」



「リリール?その"げっ!"って反応は何だよ?」



「驚いただけ!じゃあ、頑張ってね」



そそくさと去り行くリリール王子を見つめていると



「リリールと何してたの?」



と寂しそうな声で私をバックハグをして聞いて来た。



「寂しかった?」



と聞くと



「寂し…くはないんだけどね!」



と言いながら私を抱きしめる力がキツくなる。



寂しかったんだろうな。いや、嫉妬かな?なんて思いながらムーン王子の頭を撫で言う。



「こうしてみんなと仲良くさせて貰ってるけど私実はみんなのこと何も知らなかったんだなって」



「それってどういう…」



これ以上一緒に居るとサプライズなのにバラしてしまいそうだと思った私はムーン王子との会話も早々に引き上げることにした。



「じゃあ私も部屋に戻るねっ!それじゃあ!」



だが、それがムーン王子をとても傷付けたことにも気付かずに…




翌日いつものように朝食の席で王子達が迎えに来る。
だが…



「あれ?ムーン王子は?」



「あぁ、ご飯は要らないと言っていたそうだよ」



「昨日あれから何かあったの?」



「何してたの?って聞かれたから返答に困って私みんなのことよく知らなかったんだねって言った…けどやばかったかな?」



「…まぁ貴方に興味無かったって言われたら少なからず傷付くよね」



「そうだね。謝りに行こうか」



「そうだね」



そしてそのままムーン王子の部屋へ行くと扉越しにムーン王子の声が聞こえて来る。



「何処が駄目だったんだ…?いきなりハグはキツかった…?」と反省会をしているようだ。



私は扉をノックして言う。



「別に嫌だった訳じゃないよ。昨日は冷たくしちゃってごめん…良かったら一緒に朝食食べない?」



「茜?怒ってないの?」



「怒ってないよ。むしろ怒って良いのはムーン王子の方だよ」



「良かったー…嫌われたのかと思った」



「不安がらせてごめんね」



「いいよ?でも、悩みがあるなら俺にも相談してね?」



「うん」



そうしてサプライズバレを何とか回避し私達はムーン王子の誕生日パーティー当日を迎えた。