──みんなを知るために───
ベルーガ王子が倒れてから2週間



体調もすっかり良くなったベルーガ王子から私は呼び出されていた。



ベルーガ王子の部屋に着き扉をノックすると扉が開かれた。



「ムーン王子、リリール王子どうしてここに?」



「それはベル兄さんから」



「そうだね。まずは茜、この前は僕を介抱してくれてありがとう」



「どういたしまして。でも、私にも非はあるからお礼を言うことはないよ」



「でも、嬉しかったから言わせてよ」



「わかった」



「うん、本当にありがとう茜」



「んで、ベル兄さんはこの前のお礼がしたいから茜をここに呼び出したって訳」



「なるほど…ところで、どうしてふたりはここに?」



そして私は未だ解決していないベルーガ王子の弟達がどうしてここに居るのかを尋ねた。



「僕達は茜ともっと仲良くなりたいだけだよ。勿論、兄さんのデートは邪魔しない」



「リリール…」



「そうそう!だからいつでもいいから茜。俺もデートしようね?」



「うん。わかった、また時間ができたら声かけるね」



「待ってるからね〜!んじゃ、そろそろ退散しますかリリール?」



「そうだね。じゃあ、お誘い待ってるから」



「うん、またね」



そしてふたりが退散した後、ベルーガ王子はメイド達にお弁当を用意させ、ベルーガ王子おすすめの本と私が選んだ本を交換し、庭園にそびえ立つおおきな木の下で本を読み語り合った。


「そろそろお昼だろう?戻ろうか」



「そうだね」



と言い私が立ち上がるより先にベルーガ王子は立ち上がり手を差し伸べながら言った。



「この前のことは本音だけど焦らせたい訳じやまないからゆっくり考えて」



「でも、気になってるんじゃないの?」



「確かに気になってるよ。でも、茜にとっては人生の選択だ自分の気持ちを大事にして欲しいんだ」



「わかった。ありがとう、私の気持ち大切にしてくれて」



「ううん、これぐらい人として当然のことだよ。さぁ、戻ろうか」



「うん」



そしてベルーガ王子とのデートの翌日



私はムーン王子に呼び出されていた。



今日は庭園でお茶会を開催するらしい。



「ムーン王子、お待たせ…」



お茶会なのでとメイド達が気合いを入れて選んでくれた薄ピンクのドレスに身を包み、ムーン王子との待ち合わせ場所である庭園へと私は訪れていた。



「茜…っ!?」



「に、似合ってるかな?」



流石にいい歳して薄ピンクのドレスは流石に恥ずかしい。



「とっても似合ってる!可愛いよ!いつも可愛いけど今日はもっと可愛い!」



「ありがとう…ムーン王子も似合ってるね」



「ありがとう」



ムーン王子が微笑むとともにそよ風が吹きムーン王子のベージュ色のポニーテールがなびく。



中世のヨーロッパ風の庭園と薔薇が相まってとても映える。



「ほら、座って座って!ここからが一番薔薇が綺麗に見えるんだ♪」



「うん」



そして私が席に着くとムーン王子は早速紅茶とお菓子をテーブルに出しお茶とお菓子の説明を始める。



「これ俺のおすすめブレンドなんだ〜飲んでみて♪」



「じゃあ、いただきます」



私が紅茶を一口飲むと



「どう?美味しい?」



ムーン王子はちょっと不安そうな表情で聞いて来た。



「…美味しい!」



「そう!茜の専属料理人の縁堂さんに教えて貰ったんだ〜」



「そうなんだ」



「うん、でも良かった〜気に入ってくれて!俺の好きな林檎を使って作ったんだ♪」



「そうなんだ!?」



「そう!だから俺のこともっと教えるから茜の住んでた世界のこと知りたいんだ。教えてくれないかな?」



「いいよ」



「ありがとう!」



そうして私達はお茶を楽しみながら現実世界のことやこの世界のことやムーン王子のことや兄弟達のことを語り合って過ごした。



「茜」



リリール王子が私の肩を叩く。



「リリール王子?」



「今日このあと暇?」



「暇だよ。どうしたの?」



「僕とデートしてよ」



「いいよ」



「やった!じゃあ今から行こう!」



「え!?」



リリール王子はそのまま私の手を取るとスタスタと歩き出した。



「何処に行くの?」



「秘密。さ、これに乗って」



「これ…馬車?」



「そう。怖い?」



「ううん大丈夫」



「そっか、良かった。じゃあはい」



リリール王子が先に乗り込み手を差し伸べる。



私はリリール王子の手を取り、馬車に乗り込むと扉が閉まり馬車が走り出した。



「あの…私、誰にも言わずに抜け出しちゃったけど、大丈夫だったの?」



「大丈夫。ベル兄さん達には伝えてるから」



「そうなんだ!わざわざ伝えてくれてありがとう」



「どういたしまして」



暫くの間、馬車からの景色を楽しみ公園と思しき場所に降り立つと、リリール王子は言った。



「さぁ、手を貸して。この先に僕のお気に入りのスポットがあるんだ」



言われるがまま私が手を出すと、リリール王子は私の手を握り歩き出した。



暫く歩くと大きな噴水と綺麗なお花畑と大きな木がそびえ立っている。



そしてリリール王子が指を指して言った。



「あそこの木で寝るの僕好きなんだ。だから茜にもここで寝て欲しいんだ…駄目かな?」



「駄目じゃないよ、寝ようか」



「うん♪じゃあはい、頭乗せてよ」



そう言ってリリール王子は自分の太腿をポンポンと叩く。



「…膝枕?」



「嫌?腕枕にする?」



「辛くない?」



「大丈夫。幸せの重みだから」



「幸せの重み?」



「大切な人の体温とかその人の重さとか感じてたい…それが僕にとっても幸せだから」



「わかった…じゃあ膝枕でお願いします」



「おっけー。さぁ、どうぞ♪」




そして私は大きな木の下でたっぷりお昼寝した。



「おはよう、茜」



「おはようリリール王子」



「僕の膝枕どうだった?」



「ど、どうだったって…えーと…程よく硬く丁度いい高さで寝やすかった…です」



改めて思うと私、男の人に膝枕して貰ったんだと自覚しかあっと顔が熱くなる。



「ふふ…っからかってごめん。お詫びにこれあげる」



リリール王子がそう言って頭に何かを置く。



「これは?」



そう言いながら私は頭に置かれた物を取って見た。



「花冠、女の子が付けると綺麗だから作ったんだ」



「ありがとう…リリール王子」



そして私達は縁堂さんが作ったお弁当を食べてから馬車に乗り込み私達は城へと帰宅した。