───僕の幸せ───
僕の周りは最近幸せムード全開だ。



「リリールは好きな人とか居ないのか?」



ふと、食事の最中にお父様から聞かれた言葉が頭を過ぎる。



彼女を作った兄さん達は確かに幸せそうだ。



だが、僕にはそういう好きな人とかは居ない。



僕の好きなことと言えば日向ぼっこをしながら昼寝をすることとチョコレートを食べることだ。



確かにそれを自分が好意に思っている人と幸せな時間を共有出来るのは確かに幸せなのかも知れない。



だが、僕のことを解って否定せずに居る人なんか居ないに決まってる。



庭園の大きな木下でお日様を浴びながら微睡んで居ると



『まーたお昼寝してるのかな?リリール』



『ん…ベル兄さんおはよぉございます…』



ベル兄さんに声をかけられる。



『ん、おはようリリール』



ベル兄さんは寝ぼけ眼の僕の頭を撫でながら



『こんな所で寝て居たら風邪を引いてしまうよ』と僕の心配をする。



『ベル兄さんも部屋に居ないと駄目なんじゃないの?』



『そうだね…でも寂しいんだ。リリールが側に居てくれるなら僕も部屋に戻るよ』



意地悪に笑みを浮かべベル兄さんは僕に甘える。



そんな兄さんを甘やかしながら僕もベル兄さんの部屋でいつもいつの間にかベル兄さんと寝ているのだ。



「って…何を思い出してるんだか」



もうベル兄さんには茜居る。



すっかり手のかかる子が巣立ち寂しくなって居るのだろうか?



僕はそんなことを思いながらこのモヤモヤを晴らすべく城を一人で抜け出し街へと出かけた。




ガヤガヤと楽しそうな賑わいを横目に僕は街を探索する。



暫く歩き、僕は茜と来たことがある公園に辿り着く。



僕は休憩の為に噴水の淵に腰掛ける。



人々が楽しそうな笑顔を浮かべながら手を繋いで歩いている姿を見ながら僕はぼんやりと茜の事を考えて居る。



茜がベル兄さんと婚約発表をしてからもうずっと僕はこのモヤモヤとした気持ちと戦っていた。



そして婚約発表の日ユーリがベル兄さんとの想いを吐露したせいで僕は全てを悟ってしまった。



"僕は茜が大好きだ。だが、もうこの恋は叶わない"と…



そして僕の心はあの時のまま時が止まって居る。



休憩も飽きた頃、僕は再び歩き出す。



そして僕は運命の出会いを果たすのだった。



見慣れた街を歩いて居ると女の子に声をかけられる。



とても小さく小柄でタレ目が良く似合う子だ。



「この辺で美味しいパン屋知りませんか?私、観光客でこの辺詳しくなくて…」



「だったらここのパン屋がおすすめだよ」



と僕は目の前にあったパン屋を勧めた。



「ありがとうございます!」



「おーい!パン屋あったかー?」



「あったよ〜!」



彼女は笑顔でパーティーメンバーだろうか男2人を連れている。



「ねぇ、プティは何味がいいかな?」



「ナッツでいいんじゃないか?」



その時遠くの方で悲鳴が聞こえる。



「きゃー!!」



「泥棒だー!」



街の人が協力して犯人を捕らえようとするが犯人はそれを上手に躱し此方へ向かって来る。



だが最悪なことに今ここで犯人を止められそうなのは僕しか居ない。



確かあの時の観光客は武器を持ってなかった。



「あっ!リリール様!危険です!早く此方へ」



僕はその言葉を無視し犯人へと立ち向かう。



「リリール様!」



そして犯人は僕の華麗なる手刀を受けその場に倒れ確保された。



「リリール様!お怪我は…」



「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」



ホッとしたのか腰を抜かした通行人のおばさんは旦那さんと思われる男性に支えられ家へと帰って行った。



そして僕は旦那さんが城に報告された事により無事に捕まりこの後お父様とお母様にこっぴどく叱られるのだった。



翌日勇者と名乗る一行が僕を尋ねて来た。



どうやら昨日の件で御礼が言いたかったらしい。



何度も御礼をする勇者一行を宥めた後



彼女は僕に惚れ込んだらしくいきなり告白をして来た。



びっくりしつつも僕は少し嬉しかった。



そしてお父様とお母様の計らいにより一週間同棲をすることになったのだった。




そして一週間後すっかり仲良くなった僕達はいつしか恋をして、僕はプロポーズをして彼女は嬉し泣きしながら微笑んだ。