───お披露目式───
ベルの誕生日パーティーから早1ヶ月



あのパーティー会場でユーリ様はベルに絶縁を申し込まれて以来一切見かけなくなり、風の噂で別の貴族の方と婚約したのだと聞いた。



そして私は"街の人達の信頼関係を築くこと"という課題をクリアし、私は今日無事に正式にアルシュタイン家の姫として迎え入れられた。



今はベルと一緒に街の人達に手を振っている。



「茜」



「ん?」



「あれ見て」



そこにはパン屋のおばちゃんが"ベルーガ第一王子様・茜様結婚おめでとう!"横断幕を持っていた。



「おばちゃん…」



「後日ふたりでお礼に行かないとね」



「そうだね」



そうしてお披露目式は閉幕した。



その日の夜自室にベルがやって来た。



「どうしたの?」



「茜、今からデッキに来れるかい?」



「大丈夫だけどどうしたの?」



「星空が綺麗だから茜と見たいなって思って」



「そっか。あ、じゃあカーディガンとかも要るよね」



「そうだね」



そしてカーディガンを羽織り準備を整えて私はベルと一緒に自室のデッキへと出る。



上を見上げると満点の星空が広がっていた。



「うわぁ〜綺麗…」



「でしょ?茜ならきっと喜んでくれると思ってたよ」



「ベル教えてくれてありがとう」



「どういたしまして♪」



そして暫くふたりで星空を眺めてすっかり身体が冷えたので、厨房へ行きココアを2つ作ってふたりでココアを飲む。



「あー温まるー」



「温かいね」



「そうだね」



「ココアを飲んだらもうおやすみにしようか」



そう言われ、厨房内の時計を見ると時計の針は22時を示していた。



「そうだね」



そしてココアが無くなり私はコップを洗うべく、流し台の前に立つすると後ろからベルがハグをする。



それはとても温かく同時に少しくすぐったい。



「ベル?どうしたの?」



「やっぱり寂しいな…今夜は一緒に居たい…駄目かな?」



どうしてだろう私も少し寂しいと思っていた所だっただけに少し心を読まれたような気がして動揺する。



「いいよ。私も一緒に居たいって思ってた」



そしてコップを洗い終え私の自室に入るとベルは私をベッドに座らせ自分も座った。



「茜、実は僕ずっと気になってたことがあるんだ」



「何?」



「どうして茜は僕を選んだの?」



「どうしてってそりゃ…みんな優しいし良い人だよ。でも、私の気持ちに寄り添ってくれてたのはベルだけだった。私はそれが嬉しかったからベルをお婿さんに選んだの」



「茜…」



「ベルは?どうして私の事好きなの?」



「僕は本当は婚約なんて親が決めて僕はそれに従うしかないと思ってたんだ。病弱だし頼もしくもない…でも、茜を一目見て稲妻に打たれたみたいな直感を感じてこの子しか好きになれないって思ったんだ」



「ベル…ありがとう」



「僕こそ出会ってくれて…そして、僕を選んでくれてありがとう」




「あー…今日はずっと幸せだったなぁ…」



「僕も。幸せだったよ…でも、これからもずっと幸せなんだからそんなしんみりしないでよ」



「そうだね。改めて…私を選んでくれてありがとうベル」



そうして手と手を繋ぎ合わせて私達は暫く窓に映る星空と満月を眺めながら他愛ないお喋りをしつつ、いつの間にか厨房で眠りに落ちていたのだった。