───想いと願い───
10月



5年前東京に上京した兄から彼女が出来たとメールが来た。



彼女は兄より一つ歳上のOLで兄と同じくカラオケで歌うことが好きな人らしい。



"おめでとう"とメールを送ると"ありがとう☺️"と返って来た。



兄に彼女が出来たという実感が持てずに私は再びメールを開く



そこにはカメラに笑顔を向ける彼女が映っていた。




1月に兄が彼女を連れて故郷に帰って来た。



2人ともどこか緊張した面持ちで両親と私に挨拶をする。



父も母も笑顔で彼女を歓迎し、終始和やかな雰囲気が漂う中、私はどこか彼女さんとの距離感を掴めずに居た。



それを見兼ねた兄は「なぁ、気まずいか?」と声をかけてきた。



「当たり前じゃん」



「優しい子なんだぞ。俺には勿体ないくらいに」



「ふぅん」



「拗ねてんのか?お前そんなに俺のことが好きだったの?」



「そうじゃない!実感が持てないだけ!…あと、どう接したらいいか分からない」




「普通に友達と同じように接したらいい」



「…ん」



みんなの元へ戻ると、兄は彼女さんに私が気まずく思っていることを話したのか、そこからは彼女さんが沢山話しかけてきてくれたお陰で、さっきまでの気まずさは消え去り、すっかり仲良くなって居た。




4月結婚式への招待状が届いた。



どうやら6月に式を挙げるらしい。



そうこうしてる間に結婚式当日を迎え主役席には満面の笑みの兄と彼女さんが座っていた。




式が終わると兄からのメールが届いた。



"今日は来てくれてありがとう。一生の思い出になったよ"



"私こそ招待してくれてありがとう。お兄ちゃんは結婚なんかしないのかと思ってたのになー"



"うるせ。そういう運命だったんだよ"



"そっか。でも、そういうのもあるのかもね。改めて結婚おめでとう!幸せにね彼女さんにもよろしくね*ˊᵕˋ*"



END