「あ、はい…」


「両親は平凡なサラリーマン。

家も安い県営のアパート暮らし

みたいじゃないか。

長野だったら土地も安いから

一軒家は当たり前なのに」


正直、僕は少し腹が立った。

明らかに僕の両親を

バカにしている。


「あなた、何を言うのよ…

そんな事関係ないじゃ

ないですか」


お母さんが慌てて言った。

紗江も言った。


「そうよ。そんな事関係ないわ。

敬太さんのご両親に会ったけど

お二人共、本当に優しい

ご両親だったのよ」


「はぁ… そんな事こそ

関係ないんだよ」


お父さんが言った。


「正直に言うがね、

君はうちの家系には

合わないんだよ。

両親も君も大した仕事なんか

してないし」


僕は言い返そうとした。

しかし何も言わなかった。


「お父さん、何て事を言うの!

働いてる会社なんて

関係ないじゃない!

悪い事をしている

分けじゃないのに…

なんでそんな事を言うのよ!」


紗江は大声で言った。


そんな紗江を見るのは

初めてだった。


「こそこそと敬太さんの事を

調べたのね。

なんでそんな事するのよ。

お父さん最低よ…」


紗江は泣き出してしまった。


お父さんが言った。


「私は紗江の事を思って

色々言っているんだ。

紗江にはこの人は

合わないんだよ。

お前の旦那は私がちゃんと

見付けてやるから。

もっといい家庭に生まれ、

もっといい会社で働いてる人を、

ちゃんと見付けてやるから」


「あなた…

結婚相手は

親が探すものではないわ。

もう昔とは違うのよ。

どんな家庭に生まれて、

どんな仕事をしていようと、

そんな事関係ないじゃないですか」


お母さんも言った。


「うるさい!

お前らが私に意見する事など

出来んのだ!

こいつとの結婚は

絶対に許さないからな」

お父さんは怒鳴り、

部屋を出ていった。