『さようならを言う前に』








今日から10月に入った。



天気は快晴。



ポカポカ陽気で気持ちがいい。



今年の秋は暖かいらしい。



寒さに弱い僕には有り難い事だ。



寒い地方の生まれなのに

情けないが…



それにしても何故こんなにも

清々しいのだろう。



こんな気持ちは本当に久し振りだ。



諦めがついたのかな…





「お、平日なのに今日は

電車空いてるな」



僕は車両の真ん中の端の席に

座った。



いつもの席だ。



車両の繋ぎ目の方だと、

揺れが大きくて気持ち悪

くなってしまう。



だからいつも車両の真ん中辺りに

座っている。




「今日でこの電車に乗るのも

最後かな…」



僕は小さく呟いた。



電車の中を見渡した。



毎日見掛ける人が何人か居る。



みんなどんな仕事をしているの

だろう。



少しの間、そんな事を考えていた。




暫くして電車が地下から地上に出た。



僕は窓の外を眺めた。



四年分の思い出が一気に

溢れてきた。