「あの夜… 紗英さんは病院に

いたんだね」


「うん…」


「ご飯に誘ったりなんかして

ごめんね」


「ううん。あの時会えて良かった」


達也さんは笑顔で私を見た。






私は病室のドアを開けた。


「紗英…」


「お母さん、起こしちゃった?」


「ううん、起きてたわ」


「お母さん…」


「ん?」


「お母さんに会って

もらいたい人がいるの」


母は無言で頷いた。


私は廊下で待つ達也さんを呼んだ。



「こんにちは…」


母は嬉しそうな表情を見せた。


「どうぞ、座って…」


母は弱々しい声を精一杯出した。



「達也さん、来てくれて

ありがとう」


「いいえ。私の方こそ、

色々話しをしてくださって

ありがとうございました」


母は笑顔で達也さんを見た。


「お父様とは仲直り出来た?」


「はい…

お母様とお話しをしていなければ

仲直りは出来なかったと

思います。


ありがとうございました」


「良かったわね…」


母は本当に嬉しそうにな顔をした。



「実は僕、もうずっとこっちに

居ようと思って。


こっちで蕎麦屋を開きたいんです」


「そう。それはいいわ。


お父様も喜ぶわ」


「まだ父には言ってないんですが

喜んでもらえたら嬉しいです」


「きっと喜ぶわよ」


「はい…」




達也さんと話している間、

母はとても元気に笑っていた。


まだ会うのは二回目だけど、

私たちは毎日自然に会う、

家族のようだった。