太陽の光が私たちを照らしている。


温かい風が流れ込んでくる。


こんなに安らぎを感じたのは

初めてだった。



「ごめんなさい…」


「ううん。

温かい紅茶でも入れるね」


「うん…」


達也さんの言葉は本当に優しい。


何気ない一言一言が、

私の胸に染みてくる。


私は達也さんの背中を眺めた。





「はい」


達也さんが紅茶を入れてくれた。


「ありがとう」


「親父は紅茶なんて飲まないから、

自分で持ってきてよかった」


「紅茶、好きなんですか?」


泣いた後だから、私の声は

かなり弱っていた。



「うん、好きだよ。


お蕎麦と紅茶なんて、

なんか合わないけどね」


達也さんは笑ってみせた。


私も達也さんの笑顔に釣られて

笑った。



「この紅茶美味しい」


「良かった」


「何処のメーカーのですか?」


「自分でブレンドしてるんだ」


「へ〜、本格的ですね!」


「いやいや。たいしたこと

ないですよ。


でも、美味しいって

言ってもらえると嬉しいな」


「うん」



私たちは暫く黙ったまま

紅茶を飲んだ。


その時間はすごく温かい

時間だった。


私たちに言葉は必要なかった…








「紗英さん…」


「ん?」


「お母様に会わせて

貰えないかな…」


「うん…

私も達也さんに

会ってもらいたいって

思ってた」


「うん」






達也さんと私は病院へ向かった。


その間、私は母の容態を

詳しく説明した。


達也さんは何も言わず、

真剣に私の話しを聞いていた。