「あの… 以前タクシーに

乗せて頂いた時に、息子さんの

お話しを聞いて、息子さんの

お店に行ったんです。


そこで知り合いになりまして…」


「そう…

息子に一緒に来てくれとか

言われなかった?」


「あ、いや…」


図星だ…


「まぁ、帰ってきて

くれたんだからいいか。


しかもこんな可愛い女性を

連れてきてくれたんだし」


達也さんを見た。


達也さんの表情が少し緩んだ。



「達也、オレは帰りは

22時くらいななるから、

飯作っておいてくれよな。


あと、風呂を洗っておいてくれ。


お前の布団は干してあるから、

自分で取り込んでおけよ。


あと、洗濯物も」



達也さんは少し間をおいてから、

「うん」と言った。


「あ!あと、お茶は自分で

入れてくれな」


達也さんは小声で

「ケチ」と言った。



「ん?何か言ったか?」


達也さんは慌て首を横に振った。



お父様が立ち上がった。


「じゃあ、オレは仕事行くな」


達也さんが口を開いた。


「まだ早いんじゃない?」


「早まったんだよ。


しかもお前と桜井さんの邪魔を

しちゃいかんからな」


「な!」


達也さんと私は驚いた。


「オレたちは

そういう関係じゃないよ!」


「まぁ、いいじゃねーか」


「いやいや、良くないよ!」


お父様は私を見た。


「桜井さん、息子を

宜しくお願いします」


お父様は深く頭を下げた。


私は思わず「はい!」と

答えた。


達也さんはお父様と私を

驚いた表情で見ていた。




「そうだ、桜井さん、

お母さんは体は大丈夫ですか?」


「え?」


私はドキッとした。


「いや、この前、体調が

良くなさそうに見えたんで」


「だ、大丈夫です…」


私は明らかに

大丈夫じゃないという

言い方で、大丈夫と言った。