家の前に着いた。


達也さんは大きく深呼吸をした。


「桜井さん、もう一度だけ

大丈夫だって言ってくれないかな」


「う、うん…

大丈夫だよ」


達也さんはゆっくり目を閉じて

開いた。


達也さんの目付きが変わった。


私は達也さんの目を見て、

ドキッとした。



「ピンポーン」


呼び鈴が鳴る。



「はい…」


スピーカーからお父様の声がした。



「親父… オレだけど…」

少しの間、沈黙が流れた。



「開いてるよ。 ガチャ…」



お父様は一言で切った。



「入ろう」


達也さんはそう言って、

玄関のドアを開けた。


「入るよ!」


達也さんはそう言って、

家に上がった。


「桜井さんも上がって」


「う、うん…」



私はすごく緊張していた。


でも、お父様が達也さんを

叱る事はないと確信していた。


達也さんと私はリビングに行った。


お父様さキッチンにいる。


「座りな」


お父様が後ろを向きながら行った。


達也さんと私は椅子に座った。


お父様がこっちを向いた。



「あれ…」


お父様は私を見て驚いている

ようだった。


私は頭を下げた。


お父様がお茶を持って来た。


お茶は私と自分の分だけ

持ってきた。



「こんにちは。あなたは確か、

桜井さんと言ったかな」


「こ、こんにちは。


覚えていてくださったんですね…」


「ハハハッ。


記憶力はいいからね」



達也さんのお父様、

この前、タクシーに乗った時とは

雰囲気が違う…



「どうぞ、お茶を飲んでください」


「あ、はい」


達也さんは「何故オレには

お茶を持ってこない。


帰って来るなって事か」

というような表情をしていた。



「でも何故、あなたと

うちの息子が?」