「気を付けてな」


「はい…」


「敬太がなぁ…

いちの娘の婿に来てくれたらなぁ。

オレは大歓迎なんだけどなぁ。

店を継いでくれるヤツもいないし…

娘は最近冷たいし…」


「ハハハハハッ」


「なんだその笑い～」


「はぁ、娘さんの婿に

なっちゃおうかな。

あ！ でも、マスターが

父親になるんだよなぁ。

それは嫌だな…」


「なに～！」


マスターはいつも最後は

こうやって笑わしてくれる。


「じゃあな。

また何かあったら

いつでも来いよ」


「はい…」




僕と紗江はディズニーの

パスポートを買いに出掛けた。


この前は暗い感じで別れたから

僕は少し心配していたが、
紗江はそんな雰囲気を

全く見せなかった。


｢こうやってゆっくり会うの

久しぶりだよね｣


｢そうだね。

最近は二人とも忙しかったからね｣


｢先にパスポート買いに行こうか｣


｢そうだね。

私、ガイドブック買っちゃった！

後で見ようね」


「うん」


僕らは先にパスポートを買った。


「これで後は行くだけだね！

これから後はどうする？」


「そうだなぁ。

まだまだ時間あるから、

桜木町にでも行くか」


横浜の桜木町は僕と紗江が

初めてデートをした場所だ。


「桜木町なんて懐かしいよね。

急になんで？」


「いや、たまにはいいかなって」


「そうだね」


僕らは桜木町にある

クイーンズスクエアや

ワールドポーターズ、

赤レンガ倉庫などを

見て回った。


紗江は無邪気にはしゃいでいた。


こんな笑顔を見るのは

本当に久しぶりだ。


僕はそんな紗江の笑顔を見て、

紗江への気持ちがとても深い事を

改めて感じだ。