「……先生、メンバーを見る限りでは……私以外のメンバーは先生ばかりじゃないですか。どうして……」

「……クラスでお前だけだろ。異名をもらってないの」

異名――それは、1人前の魔法使いになった証であり、魔法界では成人したことになるのだ。それをもらってないのは、クラスの中で彩羽だけなのである。

「……はい」

「それで、彩羽をこの警備部隊に組み込んで、異名を持つ魔女に相応しいかどうか判断するって寸法さ。私は、彩羽に異名を持ってほしいを思っている。だが、他の先生はそうじゃないみたいでな」

「え~?僕は、ツキミ先生の意見に賛成だけど~?」

そう話に入ってきたのは、ツンツンとした赤髪にアンバーの目の男性――ロアール・ナンセン。彩羽のクラスの副担任で、歴史と魔法実践を教えている。

「……そういや、そうだったな」

「ちょっとちょっと。忘れるって、酷くない~?」

「忘れてなんかない。ただ、本気で言っているのか分からなかっただけだ」

「ん~、本気で言ってるよぉ」

そう言いながら、ロアールは欠伸をした。

「ふわぁ、寝みぃ……」

椅子に座り、ロアールは背もたれにもたれかかる。

「……ロアール先生。今は、仕事中だ。だらけるな」

ツキミがそう言うも、ロアールは「ん~」と言うばかりでさらにスライムみたいに溶けていく。