「彩羽、おはよう」

リアの近くにいた、栗色の髪を三つ編みにしたオリーブ色の女性――クラリス・アルジェルトも彩羽に向かって挨拶をする。

彩羽はクラリスに挨拶をすると、くるりと周りを見渡した。

彩羽のクラスメイトたちは、思い思いに過ごしている。例えば――。

中国の北京出身の王心花(ワンシンファ)に、「心華ちゃん!今日の髪型、似合ってるよ!」と秋田出身のムードメーカー、政宗星彦(まさむねほしひこ)が話しかけたり、心花に頼まれて髪を編んでいるブラジルのリオデジャネイロ出身のアレッサンドロ・リマ。

そして。

自分の席に座って分厚い本を読んでいる、静岡出身の財前潤一郎(ざいぜんじゅんいちろう)に花言葉の書かれた本を読みふけっている、広島出身の楪寧々(ゆずりはねね)など、様々である。

いつもの光景となった日常を見た後、彩羽は自分の席へと移動する。そして、鞄に入っていた荷物の整理を始めた。

その時、カラリと教室の扉が開く。そこにいたのは、青白い肌に銀髪、青い瞳の男性――エドヴァルド・アムンゼンがいた。彼は、魔法学校の教師で担当教科は数学と魔法薬学である。

「……六月一日、いるか?」

彩羽の名字が呼ばれ、彩羽は「は、はい!」と返事をした。