魔法。

生まれつき魔力を有した者しか使えない、特別な力である。

彩羽は、呪術師の家系に生まれた魔女だ。しかし、彩羽に呪術師の才能は無く、虐待を受けて育った。7歳の時、たまたま出会ったツキミに引き取られ、今では三重県でツキミと一緒に暮らしながら、魔法界にある魔法学校に通っている。

彩羽は、昔のことを思い出しながら黙々と味噌汁を作っていった。

生まれつき魔力が多く、世にも珍しい魔力が無限に生まれる体質の彩羽は、様々な魔法使いから狙われている。

身を守るためにツキミとともに訓練を受けた日々、ツキミから自分の名前をもらった日のことなどが彩羽の頭の中を駆け巡った。

「いたっ」

包丁で味噌汁の具材を切っていた彩羽は、突如として訪れた、右人差し指の痛みに思考を切り替える。

どうやら、包丁で指を切ってしまったらしい。

「彩羽、見せてみろ」

ツキミの言葉に、彩羽は傷をツキミに見せた。ツキミは少し考えたあと、持っていた杖先を傷口へと向ける。

ツキミが呪文を唱えると、ぽうっと杖先に淡い光が灯り、ゆっくりと傷口が塞がっていった。

「ありがとうございます」

「全く……気をつけろよな」

「はい……すみません……」

ツキミに謝り、彩羽は料理を再開した。