江戸時代に魔法家系の人間として生まれたツキミは、価値観に納得出来ず非魔法家系と関わり続けた。

やがて、ツキミは恋に落ち、駆け落ち同然で結婚した。そして、2人の子どもに恵まれたが元家族に、夫と子どもを殺され、怒りに任せて魔法家系の大半を殺害したという。

それから「奇跡の魔女」という異名から「殺戮の魔女」に変わり、罰として不老不死となったという。

ツキミがいつも付けている簪は、ツキミの愛した人からの贈り物だそうだ。

ツキミが話し終えると、彩羽はツキミを抱き締めた。

「先生、ありがとうございます。私に話してくれて……今まで辛かったですよね」

「……彩羽、私は人殺しだ……私に関わらない方が……」

「何を言っているんですか。先生は私を救ってくれた。私を育ててくれた!私にとって、命の恩人なんです。そんなこと、言わないでください」

彩羽の声が震える。ツキミからは彩羽の表情は見えないが、ツキミは彩羽が泣いているのだとすぐに分かった。

「……ありがとう、彩羽。あたしは、幸せ者だ」

ツキミは、そう呟いた。



それから数日後。彩羽の姿は教員室にあった。

「彩羽に、異名を与えることになった」

そう言い出したのは、ツキミだった。

「……異名、ですか?」

彩羽が首を傾げると、ツキミは「あぁ」と頷く。そして、ツキミは彩羽の異名を伝えるために口を開いた。

「彩羽の異名は――」