本日の天気、快晴。本日の最高気温、25℃。今の季節、春。過ごしやすい一日の始まりである。

三重県にある小さな一軒家。その一室にある布団にくるまりながら寝ていた黒髪のショートカットの女性――六十一日彩羽(うりわりいろは)は、ふと目を覚ます。

現在の時刻、6時。この辺りの時間から、彩羽の一日はスタートする。

布団から出た彩羽は、パジャマから制服へと着替える。

白いワイシャツに赤いチェック柄のスカート、胸元には赤いリボン。ワイシャツのポケットには、彩葉の通う学校の校章が刻まれていた。

その上から、彩羽はフードの付いた黒いローブを羽織る。そして、細長い黒い棒を片手に、彩羽は部屋を出るとキッチンへと向かった。

「先生、おはようございます」

既にキッチンに立っていた、長い髪を一つにまとめた切れ長の目の女性――紫苑(しおん)ツキミに挨拶をする。

その挨拶に気づき、ツキミは彩羽の方を向いた。ツキミの髪に飾られた簪の装飾が揺れる。

「彩羽、おはよう」

ツキミはニコリと笑い、彩羽に挨拶をした。

「先生、何か手伝うことはありますか?」

彩羽が問いかけると、ツキミは「なら、味噌汁を作ってくれないか?」と答えた。

彩羽は「分かりました」と頷くと、コンロの前に立つ。そして、片手に持っていた杖を振った。キッチンの棚に仕舞われていた鍋とお玉が1人出に浮き、彩羽の方へ飛んでいった。