家に着いた夏は、自分の部屋で
矢上から渡された手提げ袋から丁寧に
包装された包みを開けた……。

 大切に包装されていたのは、
白いキャンパスに描かれた、
色んな角度から描かれた無数の『レモン』。
輪切りにした断面の構図には、
無数の色を組み合あせた色が丁寧に塗られ、
絵の全体から醸し出されている爽やかな
そして、清涼感溢れる、心地がいい色使いに
夏は驚いた。

 「素敵……」
 夏は一言でその絵の素晴らしさを
表現した。