リビングに戻って来た葉山と矢上……
葉山が矢上をソファーに座るように言った。
 無言でソファーに座る矢上、そして
その対面に座る葉山……

 「慎也、どうした?」
 葉山が尋ねた。
 「いや……別に何でもない。強いて言えば、
原因は俺……かもしれない」
 
 「おまえが原因?」
 「パリに留学中ってことと、日曜日に向こうに
帰ることとか、もろもろ夏には話してなくて……
っていうか、最初は、言う必要ないと思ってたから……」
 
 「最初は?」
 「いや……深い意味はないよ。
日本に来てまで、また同じことは繰り返したくないよ」
 
 「そうか……」
 「そうだよ……ましては、相手は高校生のガキだよ」
 「慎也……それ、本心か?」
 「本心もなにもね~よ。それに、俺はあと四日で
パリに帰るんだよ。だから誤解を受けようが、
何だろうがいいんだよ……」
 矢上がそう呟いた。

 部屋に戻った夏は、
 スケッチブックに描かれた矢上の絵を
見ながら、ボロボロと涙を流すのであった。