お昼休み……。
 中庭の隅に設置してあるベンチで
パンを食べる矢上……。
 そこへ夏がやって来た。
 「ちょっと~、矢上ッち」
 少し語気強めの夏……
 「やぁ、上野さん、どうしたんですか?
そんな怖い顔をして……」
 「どうしてたんですかじゃないわよ……」
 夏が矢上の隣に座った。
 「ん? 何?」
 「何なの! 朝のあれは……」
 「朝のあれって、なに?」
 「私が超怖がり、停電、一人……のやつよ」
 「あ~、あれがなにか?」
 「も~、あの夜のことは二人だけの秘密って
言ったじゃない……あんな言い方したら
みんなに堪づかれてしまうでしょ」

 「そうか? 別にはっきり言ってないから
いいじゃん、暴風の停電の夜に二人きりで
過ごしたことなんて……」
 矢上が夏を見るとニヤっと笑った。

 「もう~、やっぱり無理~」
 夏が両手を振りかざし矢上を
パンパンと叩いた。
 「あ~、ごめん、ごめん。叩くなよ。
パンが落ちるだろ~」
 と抵抗する矢上……。


 「夏、あんなところで何やってんだろ?
 一緒にいるの矢上っちだよね」
 屋上から、中庭を見ていた恭介が
ひとみに言った。
 「本当だ……昼ご飯先に食べててって
言ってたからさ、何か用事でもあったんじゃない?
 先に食べてようよ……」
 「あ……うん」
 夏と矢上を見ながら恭介が返事をした。

 
 そして、もう一人……
 夏と矢上の様子を、渡り廊下から見ている
葉山の姿があった。