凄い勢いで葉山の家の玄関を開け、
履物を脱ぎ捨て、リビングに向かう夏。
 
 ガチャっとリビングのドアを
勢いよく開けた。
 そこには、ソファーでくつろぐ矢上の姿。
 勢いよくリビングに入ってきた夏に
驚いた矢上は慌てて起き上がった。

 「な、なんだよ。いきなりノックもせずに
人の家にはいってくるなんて。失礼だぞおまえ」
 
 「はぁ~人の家? ここは葉山先生の家で、
あなたの家じゃないでしょ?」
 語気を強めて夏が言葉を吐き捨てる。
 
 「まぁ、確かにそうだな。ここは俊二の家で、
俺の家ではない……」
 「そうでしょ? それにしても、何であなたが
ここにいるのよ……」

 「従弟だから……」
 「そんなことはわかってる。だから、
何でこの時間にあなたが、葉山先生の家に
いるんですか……?
って話よ!」
 
 「あ~、それは、俺、暫く俊二と一緒に 
暮らすから」
 「え? 今なんて……」
 「だから、俺、教育実習期間、
この家にお世話に
なることになってるんだ」
 「はぁ~? どういうことよ~」
 矢上に詰め寄る夏……
 両手を上げる慎也……

 「そう言うことだよ……夏」
 後ろから声が聞こえ、夏が振り向くと、
夏を追いかけ帰宅した葉山が立っていた。

 「慎也は、教育実習期間の間、この家で
生活をすることになってる」
 葉山がそう言うと夏は、
 「え~、2週間もいるの?」
 と矢上の顔を睨みつけた。
 夏の顔を見た矢上は
 「もう~そんな怖い顔すんなよ。
そんなところで、よろしくな……夏!」
 と彼が夏の名前を呼び捨てにした。

 「ちょと~呼び捨てにしないで!
先生~、どうにかして、最悪だ~」
 と夏は葉山のもとに駆け寄ると
葉山の方を向き指をさした。

 こうして、夏の最悪の日が
終った……いや、始まったのかも……
しれないのだった。