一方、昨夜勢いで夏に告白した恭介は
一人、自己嫌悪に陥っていた……。

 「あ~、俺、なんてことをしたんだろ。
夜中に電話なんかして、挙句の果てには
電話で告るなんて、超だせー……
ああ、夏に合わせる顔がない……」
 
 数人の女子に囲まれてお昼ごはんを食べる
恭介は頭を抱えた。

 「梶本君、どうしたの? 浮かない顔だね」
通りすがりに葉山が声をかけた。
 「あ……、葉山先生」
 恭介は女子の輪から抜け出すと、
葉山のもとに歩み寄ると、中庭のベンチの
方を指差した。
 
 ベンチに座る葉山と恭介……。

 「相変わらず、モテますね。男性陣の
嫉妬の視線を一手に集めてますね……
そのうち、やられちゃうじゃないんですか?」

 「それは、心配ないです。俺、男子からも
信頼あるし、喧嘩も結構強いんで……」
 爽やかに答える学校一のモテ男、恭介。

 「で、何をそんなに、悩んでるんですか?」
 「それは……、先生他の奴に言わないでくださいよ」
 「もちろんです。守秘義務ですから……」
 「じゃあ……」
 そう言うと、恭介は昨夜、夏に告白したことを
葉山に話し出した。
 
 「ふん、ふん、ふん。なるほど、そういうことでしたか」
 「え?」
 「いや、何でもありません。
つまり、美術部部長の川内君が
上野さんにモデルを依頼したこと、
二人で美術館に行ったことに嫉妬した君は、
思わず、勢いで彼女に告白をしてしまった……
というわけですね」

 「はい……。先生、そういうことです。
俺、クソだせーですよね?」
 「はい!超、カッコ悪いですね」
 「やっぱり……先生、どストレートに……
言いますね」
 「はい! 私は、正直者なので……。
思ったことははっきりと言いますね。 
あと、強めに……」
 
「そうでしたか……余計に傷ついたな」
 項垂れる恭介。

 そんな彼の姿を見た葉山は、
 「まぁ、言ってしまったことは仕方ないですよ。
あとは、君がこの先彼女にどう接するかでは
ないでしょうかね?」

 「どう接するかって?」
 「はい、何もなかったように普通に接すれば
いいんですよ。その方が、モテ男子らしいですよ」
 
 「そうか……。普通に接すればいいんですね。
先生、ありがとうございました。俺、普通に
接してみます」
 そう言うと、恭介は満面の笑みを浮かべ、
葉山にお辞儀をすると、その場から走り去った。

 恭介の後ろ姿を見ながら、葉山は、
 「男子高校生は、単純でピュアですね……」
 そう言うと、クスッと笑った。