路地裏のカフェに連れて来られた唯。
 「も~キヌコさん、何で俺を誘わず
 一人で来るんだよ」と口を尖らす悠。

 「だって……二人の主演映画をふたりで仲良く
観に行くのは、いさささか無理があるんじゃないかと。
 それに、どうしても映画館で観たかった。
 最初に映画出演した時にいつか、映画館のスクリーンに悠さんと一緒に映りたいって、それが私の目標だったから」

 「それが、『君との約束』だった」 
 と悠が微笑んだ。

 悠と唯がカフェを出ようとした時、カシャ カシャと
シャッターを押す音が聞こえた。

 二人が振り向くと記者らしき見覚えのある男が歩いて
来た。
 「あれ?『RAIN』の悠さんと女優のYUIさんですよね?」
 と男はニヤリと笑いながら言った。
 
 男を見た悠が唯の肩を抱き寄せると、
 「そうだけど。なんか問題ある? 
 写真撮りたきゃ取れば? 
 でもうちの事務所も彼女の事務所もあんたからの
ネタ買わないよ。
 多分、どこの週刊誌も、だって俺たち双方の事務所、
そして、『RAINのファン』公認だからさ」と言った。

 悠の言葉を聞いた男は残念そうに歩き去った。
 顔を見合わせ笑うふたり……。

 「やった! かたき討ち成功!」
 と悠はガッツポーズをした。
 
 「帰ろうか……」と悠が唯の手を握ると
二人は手を繋いで裏路地を歩いて行った。