夜遅く……この日の撮影が終了しすると、
監督の伊藤が唯に話かけた。

 「YUI お前、『RAIN』の悠君とは
知り合いなのか?」

 唯は、心の中で、監督に悠と知り合いだと
いうことがバレたのではないかとドキドキしていたが、
平静を装うと、
 「いいえ、今日が、初対面ですが何か?」
 と答えた。
 「ふ~ん、そうか……
いや、特に大した意味はないよ。
 お疲れ……」と言うと現場を後にした。

 「あ~よかった。バレるかと思った」
 と安堵したその時、唯の後ろから季里也の声がした。

 「唯ちゃん、あのさ……」
 「何? 季里也君」
 「その……唯ちゃんって、悠さんと知り合いだったの?」
 「えっ? 何で?」
 「いや、今日の昼間話してたでしょ?
 その感じがなんか知り合いぽい感じだったからさ」
 季里矢の言葉を聞いた唯。

 ニコッと微笑むと、
 「そんなこと、あるわけないじゃん。
 初対面だよ。音楽のこと色々と聞いてただけ」
 と言った。

 「そうだよね。あはは俺……ごめんね。
 その、明日の撮影も頑張ろうな。
 じゃあ、また」
 と言うと荷物を持ち季里也も帰って行った。

 同じ頃、悠のマンションで曲創りをしている
悠と友。
 ヘッドフォンを外した悠に友が聞いた。
 「なぁ、悠、おまえさ、YUIちゃんと知り合いだった?」

 友の突然の言葉に少し驚く悠。
 「何……突然……」と聞き返す。

 「い……いや、何かそんな感じがしたって
いうか……何ていうか……」
 しどろもどろになる友。

 「そんなことないよ。今日が初対面だ」
 「そうか、そうだよな」
 と友が納得する。

 「それより、早く曲仕上げようぜ」
 悠はそう言うとヘッドフォンをつけて
キーボードを弾き始めた。

 「初対面って言わなきゃよかった。
 でも、挨拶も『はじめまして』って言っちゃったしな」
 と少し後悔する唯。

 同じ頃、悠も、
 「正直に、言えばよかったかな?
 でも、キヌコさんが『はじめまして』って
言ったからな~、だから俺も『はじめまして』になっちゃったけど、後々、面倒なことにならないように
しないとな……」と考えていた。