君との約束

撮影が再開した

　悠に連れられ、スタジオに戻って来た唯。
スタジオ内で待つ伊藤、季里也、スタッフに
頭を下げると、
「皆さん、ご迷惑かけて申し訳ありませんでした。
　よろしくお願いします」と言った。

　伊藤が唯に近づき
　「唯、もう、大丈夫なんだな？」
　と念を押した。
　「はい……監督、大丈夫です」
　と唯が言った。
　「じゃあ、撮影に入るぞ。みんな、スタンバイだ」
　と伊藤がスタッフに声を掛けた。
　伊藤の合図にスタッフが各自撮影のスタンバイを
始めた。

　スタジオ内に組まれたセットの中に入る唯と季里也。

　その様子をスタジオの隅で見守る悠。

　「YUIちゃん、いくよ……いい？」
　と季里也が声をかけると、唯は、
　「うん、季里也君、やって……」
　と頷いた。

　ベッドの上に膝まづく季里也、その前に唯も膝まづく。
悠に向かって背を向けた唯は季里也に身体を預けた。

　「スタンバイ、オッケーです」
　とスタッフが伊藤に声をかけた。
　「じゃあ、いくよ……」と伊藤が声を変えた。

　伊藤の声と共に、唯がバスローブをゆっくりと脱ぐと、
唯の透き通るような白い肌と身体のシルエットが現れた。

　「カメラ……アクション」
　と助監督の声が響く。
　二台のカメラが回り始める。

　季里也が唯を抱きしめ、唯の首筋に優しく触れる。
　唯は瞳を閉じた。
　そして、ゆっくりと瞼を開けると、上目遣いで季里也を見つめる……。

　季里也が裸にした唯をゆっくりとベッドに押し倒すと、激しく彼女を抱きしめ始めた。

　その様子を見守っていた悠だったが、一瞬だけ視線を　外した。
　「俺のほうが直視できないよ」
　握りしめられた拳、悠は視線を唯と季里也に戻すと、
カットの声が聞こえるまで二人の芝居を見守った。


　「お疲れ様でした」と唯が言った。
　季里也とのシーンを撮り終えバスローブを羽織った唯が声をかけた。
　「YUIちゃん、長丁場お疲れ様。よかったよ」
　と季里也が声をかけた。
　「季里也君のリードのお陰で、無事に終ってよかった」
　と季里也に笑顔で言う唯。

　「ありがとう。後は、夕方からの悠さんとの撮影か、
俺も見学して……」
　「季里也、それはだめだぞ。おまえは、今日はもう
帰れ！」
　と伊藤が言った。
　「はいはい。お疲れ様でした」
　と言うと季里也はスタジオから出て行った。

　「唯、このあと数時間休憩だ。気持ちを切り替えて
頑張れよ」
　と伊藤が唯に声をかける。

　「監督、ありがとうございます」と言うと唯もスタジオを出て楽屋に向かった。
　楽屋に着いた唯、
　ドアを閉めると、へたっと座り込んだ。
　「はぁ～疲れちゃった。夜まで心と身体もつかな？」
　と言うとソファーに倒れ込んだのだった。