次の日の朝、『官能シーン』の撮影のためか
撮影スタジオ内には緊張感が漂っていた。

 最初に、季里也がスタジオ内に入って来た。
 スタジオ内をゆっくりと見渡し小さく頷いた。

 後ろから、伊藤監督から声をがかかる。
 「季里也、よろしく頼むな」
 「はい、よろしくお願いします」
 と返事をする季里也。

 「YUIさん、入られます」
 とスタッフの声が聞こえた。

 伊藤と季里也が振り返ると、
バスローブに包まれたYUIが入って来た。
 YUIが二人の前に来ると、落ち着いた口調で
 「今日は、よろしくお願いします」
 と挨拶をした。

 「よろしく頼むな……」
 と伊藤が唯の肩を軽く叩く。
 「YUIちゃん、頑張ろうね」
 と季里也が微笑んだ。

 唯が、スタジオ内を見回すと、
いつもの風景と違うことに気づく、
 「これって……」と呟く唯。

 それを聞いた季里也が言った。

 「そう……今日は、監督と助監督以外は
すべて女性のスタッフになってるの。
 ほら、技術スタッフも、カメラマンも
音声さんも、照明さんもすべて女性でしょ?
 伊藤監督の配慮だよ」

 安心した唯だったが、
あるいことに気づくとその表情が変わった。

 「え……何で?」驚いた様子の唯、

 スタジオの隅に、悠の姿が見える。
 悠は、唯の顔を見るとだまって
用意された椅子に座った。