YUIが席を外し季里也と二人きりになった悠。

 「悠さん、前にも一度ありましたねこんな感じ……」
 季里也が言った。

 「そうだったかな……」と悠がはぐらかす。

 「悠さん、YUIちゃんっていい子でしょ?」

 「そうだね」
 「自分のものにしたくなりました?」

 季里也の言葉に驚く悠、
 「季里也、何、突然どうした?」

 「悠さん……俺、最初はYUIちゃんのことは戦友と
思ってたんです。
 だから、あのフェイク記事のことも承諾したんです。
 でも、彼女と共演するうちに本気で彼女のこと
好きになってしまって。だから……」

 「だから? なんだよ」

 「俺が、本気だって悠さんには伝えておきたくて……」

 「それって俺がYUIちゃんのこと好きってこと前提で?」

 「はい。俺、YUIちゃんに正直な気持ちを伝えようと
思ってるんで」

 黙り込んだ悠であったが、季里也を見ると

 「なぁ、季里也、もし俺が本気でYUIちゃんのこと
好きだって言ったらどうする?」

 悠の言葉に少し動揺した季里也だったが、

 「それは、それで仕方ないです。
 でも、悠さんにはYUIちゃん、難しいと思います……」
 とはっきりと言った。

 「何でだよ? 何でそう思うんだよ」

 「だって悠さん、YUIちゃんのこと見えてない
じゃないですか。
 目の前にいて、一生懸命女優を演じているYUIちゃんしか見えてない。
 本当の『唯ちゃん』を見てないじゃないですか。
 彼女の心が、疲れてることに気づいてなかったでしょ?
 そんな人に俺、負ける気しないんで……」

 季里也の言った言葉が悠の胸に突き刺さり、
何も言えなくなった悠。

 「俺、悠さんことはマジで尊敬しています。
 でも、『唯』ちゃんのことに関しては、彼女に関することだけは負けたくない、
 そう思ってますんで……俺のほうが……『唯』ちゃんのこと……わかってあげれますから……」

 「そうか……なら、俺も遠慮しないわ」
 と言うと悠は季里也の目を見つめた。

 程なくして、撮影が再開した。
 YUIの両サイドに悠と季里也が立つと、カシャ カシャ カシャと響き渡るシャッターの音、

 「はい、季里也君とYUIちゃんいい感じ……いいよ。
見つめ合って……」

 カシャ、カシャ、カシャ。

 「悠君いいね~、そのままYUIちゃんの腰に手を
回して……そう、いいよ」

 悠と季里也とYUI、そろぞれのツーショットが
撮影される。

 カシャ、カシャ、カシャ。 

 「やっぱり、あの三人絵になるね」
 スタッフのひとりが呟いた。
 「ビジュアル最高、綺麗……ね、どちらのペアが好き?」
 別のスタッフが言った。

 「う~ん、私は季里也君とYUIちゃんかな」
 「そう? 私は、ダントツで悠君とYUIちゃん推し」
 とスタジオの隅で交わされる会話。

 もちろん、後日発売されたファッション雑誌は、
表紙を飾る悠と季里也とYUI……
言うまでもなくすぐに完売したのだった。