悠と唯のPV撮影が終わり一か月が過ぎた頃、
PVのデモテープが雅の手元、
そして、悠の所属事務所にも届いた。

 「いいんじゃない」と絶賛する雅。
 「そうですね。これはいいですね」
 と田代も満足そうに言った。

 「あれでしょ? 悠君の新曲ポスター、
数量限定で、唯とのツーショットを製作したんでしょ?」

 「はい。スチールカメラマンと担当した映像監督からの
提案だそうです。
 宣伝用と、特典用だそうです。
 そして、発売日当日は、オーロラビジョンに全面に広告が出ます。
 六十秒のショート版のPVです」

「そう、それは楽しみね。世間の反応も楽しみね」
 と雅が微笑んだ。


 悠の事務所ではデモテープを観る『RAIN』五人。

 「え~凄いじゃん、悠 何これ」
 と翼が悠の顔を見て言った。

 「ありがとう。でも、翼と良と心のユニットのPVも
物凄くよかったよ。
 これぞ、おまえら三人って感じで……」

 「ありがとう。悠に言ってもらえると自信つくよ」
 と心が言った。

 しかし、一人だけ浮かない顔をするヤツがいた。
『RAINのリーダー友』

 翼と良と心が心配そうな顔で友を見つめた。
 友が悠に向かって、
 「悠~、おまえは凄い! なんだこの曲……
俺、感激したよ。それに、何だこのPV何だ俺の……
この『失恋した感は』
 悠、畜生~、俺はおまえに負けたのか?
 YUIちゃんを……おまえに~」
 と友が悠の両肩を掴むと前後に揺さぶった。

 「ちょっと、友……どうしたんだよ?
 『失恋感』って何だよ?」と悠が聞いた。

 「それはだな」と言うと黙り込む友。

 「それは、友は、たった今見せられた悠とYUIちゃんの
PVを観て二人の雰囲気に叶わないって思ったんじゃ
ないか?『野生のカン』ってヤツで」
 と呆れ顔で翼が言った。

 「ふたりの雰囲気って……」と悠が呟く。

 「要するにそれだけ二人が素敵だってことさ
なぁ、そうだろ? 友……」

 「……」横を向いたままの友、
 「あ~あ、友 すねちゃってる」
 と言うと良が友の頭を撫でて慰めた。
 
 困り顔の悠、
 「悠、社長が呼んでるぞ」
 と江口が悠を呼びに来ると、
 悠は、江口に連れられ部屋を出て行った。

 口を尖らせたままの友、
 「悠、おまえはYUIちゃんとのこと否定はしないん
だな~」と呟いた。

 「友、何か言ったか?」
 と良が友の顔を覗き込んだ。

 「いや、何でもない。独り言だ~」
 友はお茶ら気に言った。