「はい……」と唯が千春に缶ジュースを渡す。
 「ありがとう。ライブ最高だったね~」
 「うん、スカっとしたよ」
 「やっぱり今の時期は、ライブでしょ」
 「楽しかった。千春、ありがとう」

ライブ会場近くの公園のベンチに座る二人。

 「ごめんね。千春、誘ってくれたのに
こんな場所で……」
 とすまなさそうに言う唯。

 「いいよ。唯、気にしないで。
 仕方ないよ、今や時の人だから
変にお店とか入ったら大変なことになるからね」

 「うん、ごめんね……」
 「ねぇ、唯……大丈夫?」
 「何が?」
 「何って、写真とか撮られて」
 「うん、色々あり過ぎて……」

 「大変だったんだね。
 話せないこととかも沢山あって
季里也君のこととか」と千春が言った。

 「うん、そのことなんだけど」
 「何?」

 「いや、何でもない……」
 「唯、言えないんだね。本当のこと」

 「ごめん……」
 「でも、唯 あんまり溜込んじゃだめよ」
 千春の言葉を聞いた唯の目から涙がこぼれる。
 
 千春は唯をそっと抱き寄せると、
 「唯、負けるな! 頑張れ。
 私はどんな時も唯の味方だから
早く話せる日が来るといいね……」
 と言った。
 
 「千春、ありがとう」と唯は呟いた。

 千春は、
 唯の様子から彼女はもしかしたら、
季里也君とは何でもないんじゃないかしら?
 本当の気持ちを抑えて過ごす日々は
大変なんだな。
 などと考えてしまうのであった。