「あ~、今日も疲れたぁ」

 自分の部屋に帰宅する唯、お風呂に入り冷蔵庫から
缶ビールを取り出すとプシュッとフタを開けるとビールをゴクリと飲んだ。

 『YUI』が『唯』に戻る時間、
 「今日の、晩御飯は……」と冷蔵庫から食材を取り出し、慣れた手つきで夕食を作る。

 彼女にとっては、これも息抜きの一つ。
 「よし、出来た」
 出来上がったトマトパスタをお皿に盛りテーブルに
置いた。

 食事をしながら、スマホ画面を見る唯。
 画面をスクロールする度に笑みが浮かぶ。

 「なんか、人気出てきたのかな? 嬉しいな。最近お仕事も増えたし」

 唯は、テーブルの上にあったTVのリモコンを手に取るとボタンを押した。

 「あ……悠さんだ」と呟く唯。

 TVの画面には、音楽番組で歌う『RAIN』
そして、悠の姿が映っていた。

 唯は、画面に向かって、
 「悠さん、まだまだ道のりは遠いです。なかなか悠さんのところまでは行きつかないですね」と呟いた。

 唯の部屋には、悠から贈られた『KINUKOと印字が入った台本ケース』。

 台本ケースを見た唯は、
 「早く、本格的なお芝居の仕事が来ますように」
 と呟くと缶ビールを一気に飲み干した。

 TV画面の中の悠が唯に優しく微笑みかける。