社長室を出た悠は、サングラスをかけると
廊下を歩き出した。

　悠はEV前に来るとボタンを押した。
　「悠さん……」後ろから唯の声がした。
　悠は、後ろを振り向くこともなく前を見たまま、
　「今夜連絡する」と言った。

　チン……ＥＶが到着した。
　悠は一人ＥＶに乗り込むと、唯に優しく微笑み
ＥＶのドアを閉めた。

　悠を乗せたＥＶは下へ下へと下って行く。
　それは、唯と悠の距離がどんどん離れて
行くように……

　それは、悠も同じだった。

　とっさについた、『共通の知人』がいるという噓。
『特別な感情はない』という噓。

　「はぁ～」ＥＶの中で深い溜息をつく悠。

　一人残された唯も「はぁ……」
　と深い溜息をついた。