雅がテーブルに置いた記事を見て驚く悠と唯。

 悠と唯がスクープされた記事の隣に
置かれたのは、

 『スクープ! 熱愛交際。
 俳優 酒井季里也 女優 YUI
共演する恋人同士が、本物の恋人に……』

 と大きな見出しに、
 二人の様子が記載された記事に加えて、
レストランで見つめ合唯と季里也の写真が
掲載されていた。

 「社長 これは……」
と唯が雅の顔を見ると、
 「そう、これは先日の食事会の時の。
 この日は、本当は私を入れ五名で食事をした。
 でも、どう? こうして見たら本当に季里也君と唯が
二人だけで会ってるように見えて恋人同士みたいよね。
 あなた達の写真を撮ったカメラマンに交換条件として、
この場面の写真を撮らせた」

  「じゃあ、あの食事会は、最初から私と季里也君を
 わざと二人きりにして写真を撮らせるためのもの
 だったんですか?」

 「まぁ、そういうことになるわね」
 
 雅の言葉に驚きをかくせない唯、
カタカタと震える手を必死で抑え込んでいた。

 「この雑誌社には悠君と唯、あなた達ふたりの記事と
季里也君と唯、この記事を入れ替えて掲載してもらうことにしてもらった。
 もちろん、このことは悠君サイドもご存知よ。
 人気グループ『RAIN』の悠ならこの意味がわかる
わよね?」

 「流石……業界一の社長、雅鈴子だ」
 悠が呟く。

 「悠君は理解が早いようね。
 唯は今が一番大事な時期なの。
 色恋沙汰で変な印象をつけたくないの。
 悠君だってそうでしょ?
 『RAIN』の悠が女優とのスクープ
なんか撮られたら、あなたを『推して』
くれてるファンの子たちを悲しませる
だけでしょ? それにメンバーにも
迷惑がかかるんじゃなくて?
 唯も、こう言えば理解出来るでしょ?
 この世界は甘くはないのよ、
 応援してくださる人達、支えてくれる
人々の上に成り立ってることを忘れてはいけないわ。
 ファンを悲しませることはしてはいけないの……」

 「……」
 黙り込む悠と唯。

 「でも、二人の間に特別な感情はないって
あなた達ふたりの口から直接聞けて安心したわ」

 「社長、そろそろ……」
 唯のマネージャーの田代が言った。
 「そう、時間ね。唯、CM撮影の時間だそうよ」

 「はい……わかりました」
 と言うと唯は田代と共に部屋を出て行った。