唯が話すのを遮った悠が正面に座る雅に話し出した。

 「これはらこの写真は、数か月前オフの日に、
たまたま、映画館で唯ちゃんとばったり会って、
それで、少し時間があるから……と
この写真を撮られた裏路地のカフェで
お茶を飲んでいただだけです。ただ、それだけです」

 雅が唯の顔を見て、
 「唯、悠君が言ってることは本当なの?」
 と聞いた。

 「本当です。カフェで珈琲を飲んでいただけです」
 と答える唯。

 「そう。でも、この写真を見る限り、そんな
感じには見えないわよ。
 本当の、恋人同士みたいに自然体で……」

 「……」
 再び沈黙が流れる。

 雅が悠と唯に聞いた。
「あなた達ふたりの間には何か特別なことでもあるの?」

 執拗に聞いてくる雅に黙り込む二人であったが、

 唯が突然雅に向かって、
「雅社長、あの私達実は……」
 と言った。

「実は? 何?」

「私達……その、昔からの……」
 と唯が言いかけると、
「俺たち実は、昔からの知り合いなんです」
 悠が言った。

 「昔からの知り合い?」 
 悠と唯の顔を見る雅。

「俺たち、その、唯ちゃんがデビューする前からの
知り合いで二人の共通の知人がいて、でもそれだけで
彼女がデビューしてからは撮影現場で会って挨拶する
程度です。
 それに、うちの事務所の後輩、季里也とも、伊藤監督の養成所で一緒だったことも聞いてたし、だから後輩の
共演者として二人のこと、応援してるっていうか、
それだけです。
 だから、俺は彼女に対して特別な感情はありません。
 誤解を招くような写真を撮られたことは本当に
申し訳ありませんでした」
 と悠が頭を下げた。

 「悠さん……」と呟く唯。

 「唯、今、彼が言ったことは 本当なの?」
 と雅が唯に聞いた。

 唯が悠の顔を見ると彼が小さく頷いた。
 唯は、膝にのせた拳を握りしめ、

 「はい。悠さんが言ったことに間違いありません。
私も悠さんに対して特別な感情はありません。
 写真を撮られてしまうような行動をとってしまった
こと、軽率でした。申し訳ありません」
 と唯も頭を下げた。

 二人の姿を見た雅、
天井を見上げ、大きく息を吐き小さく微笑むと、
 「そういうことなら、わかったわ」
 と言うとソファーから立ち上がり、
雅のデスクに置いてあったもう一枚の記事を
手に取ると二人の前に置いた。

 「これは……」
 目の前に置かれた記事を見て驚く悠と唯だった。