「うん。懐かしい味だよ。もう二度と口にしたくなかった味だ」 「あ……ごめんなさい」 俯いて謝る美奈の姿に我に返る。 俺は何をしているんだ? 母さんへの怒りを思い出したからって、それが美奈に八つ当たりする理由にはならないのに。 「ごめん。今日は帰る。ご飯、ありがとう」 後悔の念に支配されそうで、席を立ち部屋を出ていく。 美奈が俺の去った部屋で一人泣いていたことなど俺は知る由もなかった。