頰が濡れる。 いつか、美奈の料理を口にしたときのように。 セミの一生がこんなに短いとは思っていなかった。 あの日、親はいないと言っていた美奈の言葉を思い出す。 美奈が大きくなり、土から出てくる頃にはもう、親はいなくなっているだろう。 俺は親の居場所が分かっている。 美奈の分も親と仲を深めていきたい。 意地を張るのはもうやめよう。 ちゃんと話をしよう。 美奈は大切なことをたくさん教えてくれた。 ありがとう