「ドキドキするね……」とソワソワする水月。
「水月、ソワソワしすぎ」
そして、落ち着かない季里也。
「二人とも顔緊張してるよ」と唯が言った。
「そういう唯も顔、ひきつってる」水月が言った。
「おまえら、緊張しすぎだぞ。今日は、リラックスして
いいからな……」
ハンドルを握る伊藤監督が言った。
唯、季里也、水月の三人は、伊藤監督の撮影現場に
同行させてもらえることになったのだ。
撮影現場に入っての見学に三人はとても緊張して
いた。
「ところで、唯、それ何?」水月が彼女に聞いた。
唯が膝の上に大事そうに抱えている大きめの
トートバック。
「あ……これは、今日の皆の分のお弁当」
と唯が言った。
「お弁当?」季里也が不思議そうな顔で聞いた。
「それは、俺が頼んだんだよ」ミラー越しに運転席の
伊藤が言った。
「監督が頼んだんですか?」
「そうだ。唯は料理が上手なんでな」
「上手かどうかはわからないけど、以前料理を作ったり
お掃除したりする仕事をしてたから。
それに、気分転換にもなったし……」
唯の言葉を聞いた季里也、
「そうか……唯ちゃんよかったな。
お弁当楽しみだな……」
「おまえ、お弁当じゃなくて、俳優さんたちの演技を
しっかり見ておくんだぞ……」
と伊藤が笑いながら言った。
「は~い」と季里也が返事をした。
「伊藤監督ってレッスン以外の時は優しいよね……」
水月が囁いた。
「うん……そうだね」と唯も囁いた。
伊藤の運転する車が撮影現場に到着した。
伊藤の荷物を持ち、伊藤の後ろをついて建物の中に
入る三人。
伊藤のアシスタントや撮影スタッフが一斉に伊藤を
取り囲む。
唯、季里也、水月の三人は邪魔にならないように後
で見学を始めた。
沢山のスタッフ、撮影機材、照明器具等が撮影場所に
設置されている。
初めて見る光景に唯はドキドキしていた。
唯は、雅社長に連れられて見た『AIRA』の撮影風景を
思い出していた。
そして、有名な俳優さんと女優さんがセットの中に
入って来ると、一瞬でスタジオ内に緊張感が走り、
辺りの空気が一変した。
俳優と女優の芝居の撮影が始まった。
唯は、その一挙手一投足を、食い入るように
見ていた。
女優さんのしなやかな動きと仕草そして表情……
唯はその芝居を見れば見るほど、
自分の無力さを感じていくのであった。
「あんなの、できないよ……」と呟いた。
撮影は順調に進み、昼休憩となった。
「やった~、お昼だ……いだだきます」季里也と伊藤、
水月は唯が作ったお弁当を食べ始めた。
重箱に入れられた数々のおかずとおにぎりを美味しそうに食べる三人、
「あれ? 唯ちゃんは?」季里也が水月に尋ねた。
「う……ん。外にいるみたい。今は、行かないほうが
いいよ……」
と水月が季里也に言うと彼も黙っておにぎりを
かじった。
「まぁ、悩んで、悩んで成長する。ただそれだけだ……」
と伊藤が呟いた。
伊藤は、お弁当を食べ終わると、
「俺は、スタッフと昼からの打ち合わせだから先に行く。
午後の撮影は二時からだ。 それまではゆっくり
してなさい」
と言い残し休憩部屋から出て行った。
「唯ちゃん、大丈夫かな?」と水月が言うと、
「大丈夫さ。きっと……」季里也が呟いた。
「あれ? 季里也じゃん……」と部屋の入口から
声がした。
「あ……悠さん、お久しぶりです」
季里也と水月の前に『RAINの悠』が現れた。
「わぁ、本物だ……超カッコイイ」水月が両手を口にあて呟いた。
季里也は、『RAIN』の所属事務所の後輩だった。
「今日はどうしたの?」と悠が尋ねると、
「はい、俺、今 伊藤監督の養成所にいるんです。今日は勉強のため撮影現場の見学に来てて……」
「ふ~ん、そうか……ん? これは?」悠の目の前に
テーブルの上に広げられた重箱のお弁当が見えた。
「あ……これ、伊藤監督のリクエストで俺らの同期の子が作ったんです。
旨いから、もしよかったら悠さんも食べませんか?」と言うと季里也はお皿と割りばしを悠に渡した。
「重箱に入れてあるお弁当見るの子供の頃の運動会
以来だよ。俺、だし巻き卵大好き。
じゃあ、いただきます」と言い悠がだし巻き卵を一切れ口にした。
すると、一瞬で悠の表情が変わった……。
「悠さん、どうしたんですか?」季里也が不思議そうな顔をした。
「い……いや、このだし巻き卵、うまいなぁ~って
思って……」
「そうでしょ? 今、一緒に養成所にいる子が作ったんですよ」
「へ、へぇ~、で、その子は?」
「あ……今、壁にぶち当たってて、多分外にいますよ。
頑張り屋さんなんですけどね」
「私、スタイリストさんから話を聞くようになってて、
悠さんすみません席を外します」
とお辞儀をすると水月は部屋を出て行った。
「季里也、ペンとメモ用紙ある?」と悠が聞いた。
「ありますよ。はい、どうぞ」季里也は悠にペンとメモ用紙を渡した。
「季里也、ごめん珈琲入れてくれない?」
「わかりました。俺取ってきます」と言うと季里也は珈琲を取りに部屋から行った。
数分後、季里也が珈琲を入れたカップを運んで来た。
悠は、彼から珈琲カップを受け取り珈琲を一気に飲み干すと、
「ごちそうさま。美味しかった」と言い悠も部屋を後にした。
「水月、ソワソワしすぎ」
そして、落ち着かない季里也。
「二人とも顔緊張してるよ」と唯が言った。
「そういう唯も顔、ひきつってる」水月が言った。
「おまえら、緊張しすぎだぞ。今日は、リラックスして
いいからな……」
ハンドルを握る伊藤監督が言った。
唯、季里也、水月の三人は、伊藤監督の撮影現場に
同行させてもらえることになったのだ。
撮影現場に入っての見学に三人はとても緊張して
いた。
「ところで、唯、それ何?」水月が彼女に聞いた。
唯が膝の上に大事そうに抱えている大きめの
トートバック。
「あ……これは、今日の皆の分のお弁当」
と唯が言った。
「お弁当?」季里也が不思議そうな顔で聞いた。
「それは、俺が頼んだんだよ」ミラー越しに運転席の
伊藤が言った。
「監督が頼んだんですか?」
「そうだ。唯は料理が上手なんでな」
「上手かどうかはわからないけど、以前料理を作ったり
お掃除したりする仕事をしてたから。
それに、気分転換にもなったし……」
唯の言葉を聞いた季里也、
「そうか……唯ちゃんよかったな。
お弁当楽しみだな……」
「おまえ、お弁当じゃなくて、俳優さんたちの演技を
しっかり見ておくんだぞ……」
と伊藤が笑いながら言った。
「は~い」と季里也が返事をした。
「伊藤監督ってレッスン以外の時は優しいよね……」
水月が囁いた。
「うん……そうだね」と唯も囁いた。
伊藤の運転する車が撮影現場に到着した。
伊藤の荷物を持ち、伊藤の後ろをついて建物の中に
入る三人。
伊藤のアシスタントや撮影スタッフが一斉に伊藤を
取り囲む。
唯、季里也、水月の三人は邪魔にならないように後
で見学を始めた。
沢山のスタッフ、撮影機材、照明器具等が撮影場所に
設置されている。
初めて見る光景に唯はドキドキしていた。
唯は、雅社長に連れられて見た『AIRA』の撮影風景を
思い出していた。
そして、有名な俳優さんと女優さんがセットの中に
入って来ると、一瞬でスタジオ内に緊張感が走り、
辺りの空気が一変した。
俳優と女優の芝居の撮影が始まった。
唯は、その一挙手一投足を、食い入るように
見ていた。
女優さんのしなやかな動きと仕草そして表情……
唯はその芝居を見れば見るほど、
自分の無力さを感じていくのであった。
「あんなの、できないよ……」と呟いた。
撮影は順調に進み、昼休憩となった。
「やった~、お昼だ……いだだきます」季里也と伊藤、
水月は唯が作ったお弁当を食べ始めた。
重箱に入れられた数々のおかずとおにぎりを美味しそうに食べる三人、
「あれ? 唯ちゃんは?」季里也が水月に尋ねた。
「う……ん。外にいるみたい。今は、行かないほうが
いいよ……」
と水月が季里也に言うと彼も黙っておにぎりを
かじった。
「まぁ、悩んで、悩んで成長する。ただそれだけだ……」
と伊藤が呟いた。
伊藤は、お弁当を食べ終わると、
「俺は、スタッフと昼からの打ち合わせだから先に行く。
午後の撮影は二時からだ。 それまではゆっくり
してなさい」
と言い残し休憩部屋から出て行った。
「唯ちゃん、大丈夫かな?」と水月が言うと、
「大丈夫さ。きっと……」季里也が呟いた。
「あれ? 季里也じゃん……」と部屋の入口から
声がした。
「あ……悠さん、お久しぶりです」
季里也と水月の前に『RAINの悠』が現れた。
「わぁ、本物だ……超カッコイイ」水月が両手を口にあて呟いた。
季里也は、『RAIN』の所属事務所の後輩だった。
「今日はどうしたの?」と悠が尋ねると、
「はい、俺、今 伊藤監督の養成所にいるんです。今日は勉強のため撮影現場の見学に来てて……」
「ふ~ん、そうか……ん? これは?」悠の目の前に
テーブルの上に広げられた重箱のお弁当が見えた。
「あ……これ、伊藤監督のリクエストで俺らの同期の子が作ったんです。
旨いから、もしよかったら悠さんも食べませんか?」と言うと季里也はお皿と割りばしを悠に渡した。
「重箱に入れてあるお弁当見るの子供の頃の運動会
以来だよ。俺、だし巻き卵大好き。
じゃあ、いただきます」と言い悠がだし巻き卵を一切れ口にした。
すると、一瞬で悠の表情が変わった……。
「悠さん、どうしたんですか?」季里也が不思議そうな顔をした。
「い……いや、このだし巻き卵、うまいなぁ~って
思って……」
「そうでしょ? 今、一緒に養成所にいる子が作ったんですよ」
「へ、へぇ~、で、その子は?」
「あ……今、壁にぶち当たってて、多分外にいますよ。
頑張り屋さんなんですけどね」
「私、スタイリストさんから話を聞くようになってて、
悠さんすみません席を外します」
とお辞儀をすると水月は部屋を出て行った。
「季里也、ペンとメモ用紙ある?」と悠が聞いた。
「ありますよ。はい、どうぞ」季里也は悠にペンとメモ用紙を渡した。
「季里也、ごめん珈琲入れてくれない?」
「わかりました。俺取ってきます」と言うと季里也は珈琲を取りに部屋から行った。
数分後、季里也が珈琲を入れたカップを運んで来た。
悠は、彼から珈琲カップを受け取り珈琲を一気に飲み干すと、
「ごちそうさま。美味しかった」と言い悠も部屋を後にした。