リビングのソファーに座る唯と悠。
 「キヌコさんは、昨日見学に行って実際、
どう感じたの?」
 「キラキラして凄い世界だなって感動しました」
 「それで? やってみたいと思った?」
 「う……ん、それが、私に出来るかどうか、それに年齢も二十四だし、アイドルって年でもないから……」
 「出来るかどうかは、やってみないとわかないさ……
それに……」
 「それに?」
 「これから、キヌコさんはいっぱい、いっぱい努力しな
きゃいけない。
 壁に何度も何度もぶち当たると思う。でも、それを乗り越えて初めてスポットライトを
浴びる場所に立つことが出来るってことを忘れないでほしいな。
 キヌコさん自身は頑張ってみたいって思って
るんでしょ?」
 「悠さん……」
 悠は微笑むと、
 「努力と自信、自信をつけたら不安は消えてしまうから。だから、キヌコさん努力しなよ。
 俺は、そうやって頑張ってきたよ……」
 「悠さん、ありがとうございます」唯が満面の笑みを浮かべた。
 「キヌコさん、俺があなたを『推すよ』俺が、あなたを
最初に『推した』ファンってことでいいかな?」
 「そんな、気が早いですよ。どうなるかもわからない
のに……
でも、私、『推してくれる人』が一人でもいる限り、それに応えられるように努力します。
 悠さん、背中を押してくれてありがとうございました」と唯は深々と頭を下げた。
 「じゃあ、俺行くから……それから、おかずにだし巻き卵追加ね」
 と言うと悠は玄関から出て行った。