喫茶店に連れて行かれた唯。
　ほぼ、拉致状態で連れて来られた彼女はまさにかりてきた猫状態。
　女性が唯の顔を見ると言った。
「突然にごめんなさいね。あなた学生さん？　
　それとも社会人？」
「えっと、社会人ですけど……」
　えぇ～、この人達何なの？　
　帰りたい……と心で叫ぶ唯。
　危ない人達なのかな？　不安な唯はやっぱりこの場を
立ち去るのが一番と考えたその時、彼女が唯の目の前に
一枚の名刺を差し出した。
　唯は名刺を手に取り記載してある文字を読んだ。

株式会社　M（エム）エンターテイメント
代表取締役社長　雅　鈴子。

「社長さんですか？」と唯が彼女の顔を見て呟いた。
唯に声を掛けてきた女性は芸能プロダクション社長の
雅　鈴子。
　業界では名の知れた大物社長だった。
そして、彼女に最初、声を掛けた男性は敏腕マネージャーの田代。
　彼女が、唯に言った。
「あなた、うちの事務所に入らない？」
「はっ？」と驚く唯。
「あなた、とても魅力的。言い換えれば宝石の原石、
磨けば絶対に光輝くと思うの。
　私の目に狂いはないわ」
「何を言われてるのか私にはさっぱりわかりませんが」
「とにかく、これ、今度見学がてらに遊びに
いらっしゃい」
　と言うと雅と田代は喫茶店を出て行った。
一人残された唯……珈琲を飲み干すと溜息をついた。