~プロローグ~



 時代は二千六年……。

 小説を執筆して二年目。

 これまで『新宿クレッシェンド』『でっぱり』『打突』など、多数の作品を執筆してきたが、同じジャンルしか書けていない現状に頭を抱えていた。

 違うジャンルの作品を書いてみたい……。

 いくら考えても、いいアイデアは出なかった。

 今日は仕事も休みで、気分転換にホラー映画を見ている。

 ようは現実逃避をしている訳である。

 一体、何作ぐらいのDVDを借りたのだろうか。

 最近のやつは、「ワー」とか「ギャー」ばかり目立って、心底怖いものが何もない。

 霊的な映像を見ていると、ついこれは合成か何かでやらせなんじゃないかと勘繰ってしまう。

 私ならここをこういじって、もっと怖くするんだけどな……。





「そうかっ!」

 何かが頭の中で閃いた。





 私は、パソコンに向かい、ワードを起動する。







 キーワードはDVD……。

 そして映像……。



 作品名も、自然と頭に浮かんだ。




『ブランコで首を吊った男』


 うん、これならインパクトある名前だ。







 様々な構想が浮かび上がり、一つの物語に混ざっていく。

 今なら、この閃きをうまい具合に、作品を書けるだろう。

 自分にとって未知の新たなジャンル、ホラー小説……。





 私なら、心底怖いホラーを書ける。

 そう静かに心の中で呟いた。



 私は、一心不乱に両手でキーボードを打ち出した。