「これ……どうやって止まるのっ!?」
風魔法を使い、部屋の窓から鳥のように飛び立ったのは良かったんだけど、飛ぶ方向を変えたり、速度を落としたりする方法が分からない。
鳥のように……というより、弾丸みたいな感じかも。
真っ直ぐ打ち出された後は、ただ落下するのを待つだけ……お願いだから、落ちる時は誰もいない湖とかにして欲しい。
誰かを巻き添えには……あぁぁぁっ! 高度が落ちてきたぁぁぁっ!
目の前に広がるのは……森っ! 人はいないと思うけど、怪我とかしませんようにぃぃぃっ!
「……よ、良かった。生きてた」
風魔法でバリアみたいなのが張られていたみたいで、殆ど減速する事なく地面に大きな穴を開けたけど、身体はどこも痛くなかった。
よくよく考えたら、飛んでいる間も風を感じなかったし、このバリアみたいなのが、ずっと私の周りにあったのだろう。
「ここは……何処なんだろ。飛んできた方向はわかるけど、どっちに行けば実家に帰れるのかな?」
直径二メートルくらいの穴から出ると、周囲を見渡して……うん。木しかないね。
落ちる直前にも見たけど、かなり大きな森みたいだし、リンゴっぽい木の実が沢山あるから、とりあえず……リフレッシュかな!
アリスは、魔法に長けた魔王の娘だからか、光魔法以外の全ての魔法が使える。
なので、落下で出来た穴に土魔法を使い、良い感じに石を敷き詰めると、水魔法と火魔法を同時に使い……
「出来たっ! 簡易の露天風呂っ!」
森の中に、湯気の立つお風呂を作った。
脱衣所も目隠し用の衝立もないけれど、こんな所に人なんて来ないし、服は異空間収納にしまえるので、早速服を脱いでお湯に浸かる。
「ふゎー……生き返るぅ」
熱過ぎず、ぬる過ぎず……自分で出したお湯だからか、丁度私の好きなお湯加減になっている。
しかも私の好きな乳白色で、湯もみもしていないのに滑らかでしっとりとしたお湯……あれ? これってもしかして、私好みの温泉に入りたい放題だったりする?
あとで、別の温泉をイメージしてお湯を出してみようと思いつつ、この世界……小説について考える。
「確かアリスは、何者かに殺されて、それが引き金となって人間と魔族が争いを始めるのよね」
小説が始まる数十年前まで、人数が多い人間の国と、少数だけど魔法に長けた魔族の国が領土を巡って争っていた。
それをアリスのお爺さん……前魔王が和平を結び、戦争を終わらせたんだ。
それから平和の証にって、互いの国で王女が生まれて五歳になったら、相手の国へ留学させるっていう話になったんだけど、魔族をよく思っていない誰かにアリスが殺されてしまう。
「まだ最後まで読んでないし、読んだ所までだと、犯人が誰か明かされていないのがね……」
犯人が分かっていれば、まだ警戒のしようがあるんだけど……と、暫く記憶を辿っていると、湯気の向こうに何かが見えた。
最初は気のせいかと思ったんだけど、確かに何かがいる。
まさか、あの屋敷から誰かが追って来たの!?
あそこは公爵家のお屋敷なので、作中でも優秀な人が何人かいる。
だけど、魔族の……それも魔王の力を受け継いでいるアリスに追いつける程の魔法の使い手はいないはずだ。
お湯の中で息を止め、目だけ出して様子を見ていると、やって来たのは……大きな猫?
フラフラ歩いてきて……倒れたっ!?
「大丈夫っ!?」
思わずお風呂から飛び出ると、駆け寄ってその身体に触れる。
……冷たい。
私と……五歳のアリスと、ほぼ同じ体長の大きな灰色の猫を抱えると、なんとか一緒に温泉の中へ。
猫はお風呂を嫌うはずだけど、ピクリとも動かない。
それどころか、湯気が消えていき、お湯が急激に冷めていくように思える。
「頑張って! えっと……そうだ。追い焚きっ!」
左手で猫ちゃんを支えながら、火魔法をイメージした右手でお湯をかき混ぜていると、再び湯気が立ち上り始めた。
それなら少しすると、猫ちゃんがピクンと動く。
そして、目が合うと……
「お嬢さん、ありがとー! 助かったよー!」
猫ちゃんが、喋ったぁぁぁっ!
風魔法を使い、部屋の窓から鳥のように飛び立ったのは良かったんだけど、飛ぶ方向を変えたり、速度を落としたりする方法が分からない。
鳥のように……というより、弾丸みたいな感じかも。
真っ直ぐ打ち出された後は、ただ落下するのを待つだけ……お願いだから、落ちる時は誰もいない湖とかにして欲しい。
誰かを巻き添えには……あぁぁぁっ! 高度が落ちてきたぁぁぁっ!
目の前に広がるのは……森っ! 人はいないと思うけど、怪我とかしませんようにぃぃぃっ!
「……よ、良かった。生きてた」
風魔法でバリアみたいなのが張られていたみたいで、殆ど減速する事なく地面に大きな穴を開けたけど、身体はどこも痛くなかった。
よくよく考えたら、飛んでいる間も風を感じなかったし、このバリアみたいなのが、ずっと私の周りにあったのだろう。
「ここは……何処なんだろ。飛んできた方向はわかるけど、どっちに行けば実家に帰れるのかな?」
直径二メートルくらいの穴から出ると、周囲を見渡して……うん。木しかないね。
落ちる直前にも見たけど、かなり大きな森みたいだし、リンゴっぽい木の実が沢山あるから、とりあえず……リフレッシュかな!
アリスは、魔法に長けた魔王の娘だからか、光魔法以外の全ての魔法が使える。
なので、落下で出来た穴に土魔法を使い、良い感じに石を敷き詰めると、水魔法と火魔法を同時に使い……
「出来たっ! 簡易の露天風呂っ!」
森の中に、湯気の立つお風呂を作った。
脱衣所も目隠し用の衝立もないけれど、こんな所に人なんて来ないし、服は異空間収納にしまえるので、早速服を脱いでお湯に浸かる。
「ふゎー……生き返るぅ」
熱過ぎず、ぬる過ぎず……自分で出したお湯だからか、丁度私の好きなお湯加減になっている。
しかも私の好きな乳白色で、湯もみもしていないのに滑らかでしっとりとしたお湯……あれ? これってもしかして、私好みの温泉に入りたい放題だったりする?
あとで、別の温泉をイメージしてお湯を出してみようと思いつつ、この世界……小説について考える。
「確かアリスは、何者かに殺されて、それが引き金となって人間と魔族が争いを始めるのよね」
小説が始まる数十年前まで、人数が多い人間の国と、少数だけど魔法に長けた魔族の国が領土を巡って争っていた。
それをアリスのお爺さん……前魔王が和平を結び、戦争を終わらせたんだ。
それから平和の証にって、互いの国で王女が生まれて五歳になったら、相手の国へ留学させるっていう話になったんだけど、魔族をよく思っていない誰かにアリスが殺されてしまう。
「まだ最後まで読んでないし、読んだ所までだと、犯人が誰か明かされていないのがね……」
犯人が分かっていれば、まだ警戒のしようがあるんだけど……と、暫く記憶を辿っていると、湯気の向こうに何かが見えた。
最初は気のせいかと思ったんだけど、確かに何かがいる。
まさか、あの屋敷から誰かが追って来たの!?
あそこは公爵家のお屋敷なので、作中でも優秀な人が何人かいる。
だけど、魔族の……それも魔王の力を受け継いでいるアリスに追いつける程の魔法の使い手はいないはずだ。
お湯の中で息を止め、目だけ出して様子を見ていると、やって来たのは……大きな猫?
フラフラ歩いてきて……倒れたっ!?
「大丈夫っ!?」
思わずお風呂から飛び出ると、駆け寄ってその身体に触れる。
……冷たい。
私と……五歳のアリスと、ほぼ同じ体長の大きな灰色の猫を抱えると、なんとか一緒に温泉の中へ。
猫はお風呂を嫌うはずだけど、ピクリとも動かない。
それどころか、湯気が消えていき、お湯が急激に冷めていくように思える。
「頑張って! えっと……そうだ。追い焚きっ!」
左手で猫ちゃんを支えながら、火魔法をイメージした右手でお湯をかき混ぜていると、再び湯気が立ち上り始めた。
それなら少しすると、猫ちゃんがピクンと動く。
そして、目が合うと……
「お嬢さん、ありがとー! 助かったよー!」
猫ちゃんが、喋ったぁぁぁっ!