「お嬢様……?」

呆然(ぼうぜん)としている私の顔をメイドのリーリルが覗き込んでいる。

「どうされましたか?」

気づいたら、もうフリクはいなくなっていた。

「リーリル」

「扉をノックしても返事がないので、心配ではいってきてしまったのですが……」

申し訳なさそうなリーリルに私は我に返った。

「大丈夫よ!ちょっとぼーっとしていて……」

本当はすぐにでもリーリルに相談したかったが、つい誤魔化してしまう。

だって心配をかけたくなかった。

そんな私の右手をリーリルが急にギュッと握った。

「お嬢様は相変わらず嘘が下手ですね」

いつもの優しい笑みを向けてくれる。

「どうされたのですか? リーリルに教えて下さい」

リーリルの優しさに私は何度救われれば良いのだろう。

「またフリクが現れたの」

「っ!?」

「それでこう言ったわ。『今度は沢山の人に好かれてこい』と」