私がベッドから上半身を起こすと、フリクは私の座るベッドの端に腰掛けた。


「クラヴィス・イージェルに出会えたのは幸運だったな」


フリクが月明かりに照らされている私の部屋を眺めている。

「クラヴィスには感謝しかないですわ……それでも、周りの者に助けて貰ってばかりの自分に嫌気が差すのです」

私に無理難題を押し付けたのはフリクであるはずなのに、全ての事情を知っているフリクにどこか安心感があって、私はついそう(こぼ)してしまった。

フリクがどこか不思議で、それでいて優しい雰囲気であることも大きいだろう。

フリクは私の言葉を聞いて、視線を少しだけ私に向けたがすぐにまた逸らした。



「そこで自分のことを迷惑だと思うのは違うんじゃない?」



「え?」



「周りの者は……いや、マリーナの味方は、マリーナを助けたいだけ。マリーナの役に立ちたいだけ。君のことが大切で、好きだから。それだけだろう?」



部屋も暗いので、フリクの表情はよく見えない。



「きっと君もそれだけの愛情を返している。それに、確か君がクロルに言っていたんだろう? 『守り合えば、最強』だと。補い合うようなそんな関係でありたいと」

「君は気づいていないかもしれないけれど、君が知らないうちに周りの者を救っていることもある。安心したらいい」



私に不思議な課題を押し付けたのはフリクであるはずなのに……彼は今、私を安心させる言葉を並べてくれている。