立ち上がらないと。

前を向かないと。

会場に響いている罵声が……すぐ側で聞こえているはずの罵声が、何故か他人事のようにすら聞こえる。

そのはずなのに、手は震えていた。

顔から滴っているのはワインなはず……決して、涙であるはずがない。

早く立ち上がらないと、主催者にまで迷惑をかけてしまう。

いや、もうかけているか。

私が外に出るだけでこれだけの騒ぎになる。

それでも、屋敷にずっと閉じこもっているわけにはいかないの。

その時、会場の別の場所から「マリーナ様……!」とクロルの声が聞こえた。

きっとクロルは私を心配して、そばに来ようとしている。

クロルに守って貰ってばかりいては駄目。