「大丈夫よ、リーリル。心配しないで」

「しかし、私もクロルも側にいられない場所にお嬢様を行かせるなんて……!」

「リーリル、私は幼い子供ではないのよ?」

「分かっております。分かっておりますが……」

「リーリル、私ね、今日のドレスも髪型も素敵で大好きだわ。リーリルのおかげね。だから、美しく着飾っているドレスも髪型も今の私にとっては(よろい)なの」

私は馬車を降りた後に、もう一度リーリルの方に振り返った。

「行ってきます」

「ちゃんと笑顔で帰ってくるわね」とは最後まで言えなかった。

きっとどれだけ会場で強がっても、帰ってリーリルの顔を見たら泣いてしまうかもしれないから。

そして、私は窓からライトの輝きが漏れる会場に足を踏み入れた。