「お嬢様、鏡の方を向いて下さい」

「??」

私はリーリルの言葉の意味が分からないまま、もう一度鏡台に向き直る。

すると、リーリルが私の髪をもう一度梳かし始めた。

「あら、もう髪は梳かし終わったのではないの?」

「……いつもより念入りに梳かします。明日の学園も美しい髪にするので、自信を持ってお嬢様らしくいて下さいませ」

「ふふ、ありがとう」

髪を梳かし終わると、リーリルが私の隣で膝を着いた。

「お嬢様、それと報告が一つ」

「何かあったの?」

「本日、カートル公爵家から婚約記念パーティーの招待状が届いていました」

「カートル公爵家といえば、確か私より二歳上のご令嬢が居たわよね」

「はい、その方がミクリード侯爵家の次男と婚約を結んだようです」

「それは欠席するわけには行かないわね」

私は幼い頃以降パーティに参加したことはない。

身体が弱かったこともあったが、元気になった後すぐに「嫌われ者」になってしまったから。

屋敷の外に出るわけには行かなかった。