それでも、無視や聞こえる声量での悪口は続いた。

「マリーナ様、大丈夫ですか」

クロルはずっとそばにいてくれたが、顔は険しいままだった。

「ねぇ、あの方ってクロル・サート様じゃない?」

「え、去年の騎士団の模擬戦で優勝候補だった方?」

「なんで悪女なんかと一緒にいるの?」

「噂だとマリーナ様が気に入って、自分の護衛騎士から離さないって聞いたけれど」

「最低じゃない」

「可哀想だわ」

クロルが噂をしている令嬢たちを睨みつけた。

私はすぐに小声でクロルを制止した。

「やめなさい、クロル」

「しかし、あまりに事実と違います」

「噂とは尾ひれが付くものよ。慌てる必要なんてないわ」

そして、私は自分の頬を軽くペチンと叩いた。


「そうは言っても、クロルまで巻き込むのは私の道理に反するわ」


私は令嬢たちに近づいた。